本資料は2月17日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はhttps://media.bayer.comをご参照ください。
ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法+ドセタキセルの併用療法が転移性ホルモン感受性前立腺癌患者の全生存期間を有意に延長
- 第Ⅲ相ARASENS試験の結果、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者において、ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルの併用療法は、ADT+ドセタキセルと比較して32.5%の有意な死亡リスクの低下を示した(ハザード比[HR]=0.68、95%信頼区間[CI]0.57-0.80、P<0.001)
- 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、疼痛増悪までの期間、症候性骨関連事象(SSE)の初回発現までの期間、および次の全身抗癌治療の開始までの期間の延長など、患者にとって重要な副次評価項目でも一貫して良好な結果が得られた
- 治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)の全体的な発生率は投与群間で同様であった
- 第Ⅲ相ARASENS試験の主要な結果が初めて、2022年ASCO GUの口頭演題で発表され、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載された
ベルリン、2022年2月17日 ― 第Ⅲ相ARASENS試験の結果、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者において、経口アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルとの併用療法により、ADT+ドセタキセルと比較して全生存期間(OS)が有意に延長し、死亡リスクが32.5%低下することが示されました(HR=0.68、95% CI 0.57-0.80、P<0.001)。主要解析のデータカットオフ時(2021年10月25日)における治療期間の中央値は、ダロルタミド+ADT+ドセタキセル投与群で41.0か月、ADT+ドセタキセルで16.7か月でした。ダロルタミド+ADT+ドセタキセルの併用療法では、副次評価項目および事前に規定したサブグループで一貫して良好な結果が得られました。治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)は投与群間で同様でした。これらの結果は、2022年ASCO GU Cancers Symposiumで発表され、同時に医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました。
マサチューセッツ総合病院がんセンターの泌尿生殖器悪性腫瘍プログラム責任者であるマシュー・スミスは次のように述べています。「mHSPCは命に関わる重篤な疾患です。この数年間で、治療が進展したにも関わらず、5年以上生存している患者さんは30%のみです。ARASENS試験では、mHSPCの初期治療として、標準治療であるADT+ドセタキセルにARiのダロルタミドを追加することにより、OSが有意に延長されました。また、ダロルタミドは、去勢抵抗性前立腺癌進行までの期間など主要な副次評価項目において良好な結果を示しました。これらの結果はmHSPCの患者さんの治療にとって重要な前進です」
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、バイエルのオンコロジー・ストラテジック事業部責任者であるロバート・ラカーズは次のように述べています。「非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)を対象とした既存の第Ⅲ相ARAMIS試験データにmHSPCを対象としたARASENS試験の結果が追加されたことで、ダロルタミドは2つの重要な臨床試験において、前立腺癌の重要な病期の患者さんに対する良好なデータを示しました。ダロルタミドは、適応となる前立腺癌患者さんにおける基盤としての治療薬となる可能性があると考えています。私たちは、このmHSPCに対する新規治療選択肢を、患者さんやその治療を行う医師が利用できるようにするために尽力しており、可能な限り早いタイムラインで薬事関連業務を推進します」
ARASENS試験は、mHSPC患者を対象とし、第二世代のARi+ADT+ドセタキセルの併用療法を、ADT+ドセタキセル(海外ガイドラインで推奨される標準治療)と比較した唯一の、無作為化、前向き、二重盲検試験です。
ダロルタミドは、転移リスクが高いnmCRPC患者の治療薬として、ニュベクオ®の製品名で、米国、欧州連合(EU)、日本および中国など世界の60以上の地域で承認されています。本製品は、バイエルとフィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行いました。本剤は、mHSPCを対象とした第Ⅲ相臨床試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の国際共同第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌を対象とした他の試験でも検討が進められています。
ARASENS試験の詳細な結果
追跡調査期間においてADT+ドセタキセル投与群(75.6%)では次の全身抗癌治療(アビラテロン、エンザルタミド、カバジタキセル、ドセタキセル、塩化ラジウム-223、アパルタミドなど)がダロルタミド+ADT+ドセタキセル投与群(56.8%)に比べてより多く使用されていたにもかかわらず、ダロルタミド+ADT+ドセタキセル投与群でOSの有意な改善が観察されました。ARASENS試験のデータでは、有意なOS延長効果に加え、プラセボと比較したCRPCに進行するまでの期間の延長(HR=0.36、95% CI 0.30-0.42、P<0.001)など、主な副次評価項目でも一貫して良好な結果が示されました。ダロルタミド+ADT+ドセタキセルの併用療法でも、プラセボと比較した疼痛増悪までの期間(HR=0.79、95% CI 0.66-0.95、P=0.01)、症候性骨関連事象(SSE)の初回発現までの期間(HR=0.71、95% CI 0.54-0.94、P=0.02)、および次の全身抗癌治療の開始までの期間(HR=0.39、95% CI 0.33-0.46、P<0.001)で良好な結果が得られました。
治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)は、投与群間で同様でした。最もよくみられたTEAE(≥10%)は、両群でドセタキセルによる治療が重なっている期間に最も多くみられ、その後徐々に減少しました。各投与群(ダロルタミド+ADT+ドセタキセル、ADT+ドセタキセル群)で最もよくみられたAEは脱毛症(それぞれ40.5%および40.6%)、好中球減少症(それぞれ39.3%および38.8%)、疲労(それぞれ33.1%および32.9%)、および貧血(それぞれ27.8%および25.1%)でした。それぞれの投与群の66.1%および63.5%でみられたグレード3または4のAEは、主に好中球減少症(それぞれ33.7%および34.2%)によるものでした。重篤なAEはそれぞれの投与群の44.8%および42.3%で発現し、投与中止に至ったTEAEはそれぞれの投与群の13.5%および10.6%で発現しました。
疲労、転倒、骨折、精神的機能障害、心血管イベントなど、前立腺癌に対しAR経路阻害剤による治療を受けた患者でみられる特に注目すべきAEは、投与群間で同様でした。
ARASENS試験について
ARASENS試験は、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者を対象とし、アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)である経口ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)+化学療法のドセタキセルとの併用療法の有効性および安全性を検討する、前向きにデザインされた、第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照臨床試験です。新たに診断された1,306名の患者が、標準治療であるドセタキセル+ADTに加えてダロルタミド600 mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ドセタキセル+ADTに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けられました。
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。
転移性ホルモン感受性前立腺癌について
前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました1。
診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。患者さんの約5%は、初回診断時にすでに遠隔転移が認められます。転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体阻害剤とADTの併用療法、化学療法のドセタキセルとADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどのmHSPC患者さんは生存期間の限られた去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行します。
ニュベクオ®(ダロルタミド)について
ダロルタミドは、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。これにより、受容体機能と前立腺癌細胞の増殖を阻害します。本剤は、転移リスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺癌患者(nmCRPC)の治療薬として、 ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本、中国を含めた世界の60か国で承認されています。本剤については、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象にした第Ⅲ相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の国際共同第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌患者を対象に臨床試験を実施しています。これらの試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。
バイエルにおける前立腺癌について
バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり1、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。
出典:
1.Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. Accessed February 2022.
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は414億ユーロ、従業員数は100,000名(2020年)。特別項目計上前の研究開発費は49億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2022年2月18日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。