本資料は2月13日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
うっ血性心不全を対象としたAskBio社の遺伝子治療の第Ⅱ相臨床試験に最初の被験者を組み入れ
- AB-1002はニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度の心不全症状を有する成人非虚血性心筋症患者を対象とした治験段階の遺伝子治療薬1
- GenePHIT試験はAB-1002単回投与時の安全性と有効性を評価する臨床試験であり、本遺伝子治療について、これまでで最多の被験者を組み入れる予定1
ドイツ・ベルリン、米国・ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、2024年2月13日 ― ドイツ・バイエル社および当社の完全子会社として独立した遺伝子治療企業であるAsklepios BioPharmaceutical社(以下、AskBio社)は、うっ血性心不全治療薬AB-1002(NAN-101)の第Ⅱ相臨床試験GenePHIT(Gene PHosphatase Inhibition Therapy)に、最初の被験者が組み入れられたことを本日発表しました。
GenePHIT試験は、非虚血性心筋症でNYHA心機能分類Ⅲ度の心不全症状を有し、4週間以上医学的に安定している成人を対象に、AB-1002を単回冠動脈内投与したときの安全性と有効性を評価するアダプティブ、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、多施設共同試験です。うっ血性心不全治療薬AB-1002の開発における今回のマイルストーン達成により、本治験薬はアンメットメディカルニーズの高い患者さんの治療に一歩近づく可能性があります2。
GenePHIT試験には、ガイドラインで推奨されている治療を行っているにもかかわらず、心不全症状が続いている左室駆出率15~35%の成人被験者90~150人が登録される予定です。52週時点の有効性主要評価項目は、複数の臨床的に重要な評価項目の修正Win比です1。
治験責任医師で運営委員会メンバーのティモシー・D・ヘンリー氏は次のように述べています。「第Ⅱ相臨床試験GenePHITにおける最初の被験者の無作為割り付けは、心不全コミュニティにとって大きな節目です。GenePHIT試験では、これまでで最も多くの被験者を対象にAB-1002の安全性と有効性を評価することにより、うっ血性心不全治療に対する遺伝子治療全般についての理解を深めます。本臨床試験の開始により、この致命的で深刻な疾患の経過を変える可能性に一歩近づきました」
AskBio社うっ血性心不全サイエンティフィックチェアのロジャー・J・ハジャールは次のように述べています。「心不全啓発週間中に、この重要なGenePHIT試験の最新情報を発表でき、今回のマイルストーンに特別な意味が加わりました。この第Ⅱ相臨床試験への最初の被験者登録は、うっ血性心不全に対する心臓遺伝子治療のあらゆる側面における長年の熱心な研究開発の集大成です。この早期段階の治験用遺伝子治療薬については、まだ多くの情報を得る必要がありますが、うっ血性心不全の治療にAB-1002を用いた遺伝子治療を進めるAskBio社の能力を示し、今回の発表が新たな治療選択肢を期待する皆さまの励みになるニュースとなることを願っています」
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者のクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「高齢化が進む中で、心不全は特にアンメットメディカルニーズが高まっている深刻な疾患です。この疾患の根本的な原因に対処する遺伝子治療の潜在的な影響は計り知れず、患者さんへ真に革新的な治療選択肢の提供を目指すうえで、今回の一歩に胸を躍らせています」
AB-1002は治験段階の遺伝子治療薬であり、製造販売承認を受けていないため、その有効性と安全性は確立されておらず、十分に評価されていません。AB-1002は、AskBio社の完全子会社で独立経営のViralgen Vector Core社が製造しています。
【GenePHITについて】
GenePHIT試験は、アダプティブ、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、多施設共同、第Ⅱ相臨床試験です。非虚血性心筋症でNYHA心機能分類Ⅲ度の心不全症状を有する18歳以上の男女を対象に、AB-1002を単回冠動脈内投与したときの安全性と有効性を評価します1。被験者は低用量、高用量、プラセボの3つの治療群のいずれかに、1対1対1の割合で無作為割り付けされます。主要評価項目には、心血管死のほか、NYHA心機能分類、左室駆出率(LVEF)、最高酸素摂取量(pVO2)、6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化が含まれます1。詳細については、clinicaltrials.gov(NCT#05598333)、またはaskbio.comを参照ください。
【うっ血性心不全について】
心不全は、臓器への十分な酸素供給など、心臓が身体の需要に見合う十分な血液を効率的に送り出せなくなった場合に起こります3。うっ血性心不全では、心臓から送り出される血液の流れが遅くなり、静脈を通って心臓に戻る血液が逆流します。その結果、身体の組織がうっ血します。症状としては、脚や足首のむくみがあります。肺に水が溜まって呼吸が妨げられることもあります4。世界で約2,600万人がうっ血性心不全に罹患しています5。
AskBio社について
Asklepios BioPharmaceutical社(以下、AskBio社)はドイツ・バイエル社の完全子会社で、独立経営の企業であり、生命を救う医薬品を開発し、人々の生活を変えることに特化した遺伝子治療企業です。AskBio社は、臨床試験段階のパイプラインとして神経筋疾患、中枢神経系疾患、心血管疾患、代謝性疾患を適応症とする幅広い臨床試験プログラムのポートフォリオを有しており、その中にはうっ血性心不全、ハンチントン病、肢帯状筋ジストロフィー、多系統萎縮症、パーキンソン病、ポンペ病の治療薬が含まれています。AskBio社の遺伝子治療プラットフォームは、業界をリードする独自の細胞株産生プロセスであるPro10™や豊富なカプシドライブラリー、プロモーターライブラリーなどがあります。AskBio社は米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにグローバル本社、スコットランド・エディンバラに欧州本社を置き、数百もの独自のカプシドやプロモーターを創製し、そのうちのいくつかは前臨床試験や臨床試験に入っています。遺伝子治療分野における初期のイノベーターであり、5カ国に900人以上の従業員を擁し、アデノ随伴ウイルス(AAV)生産やキメラカプシドなどの分野で、800件以上の特許および特許出願を保有しています。詳細はwww.askbio.comをご参照、またはLinkedInでフォローしてください。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は507億ユーロ、従業員数は約101,000名(2022年)。特別項目計上前の研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
Viralgen Vector Core社について
Viralgen社は2017年設立の医薬品開発製造受託機関(CDMO)で、AskBio社(ドイツ・バイエル社の完全子会社として独立経営)の独立経営子会社です。Viralgen社は、米国の医薬品適正製造基準(cGMP)認証を受けたAAV製造業者として、Pro10™を用いた懸濁液製造プラットフォームを提供しています。本プラットフォームはAskBio社からライセンスを受け、最高技術責任者のジョシュ・グリーガーと共同設立者でノースカロライナ大学のR・ジュード・サムルスクが開発した技術です。Pro10™プラットフォームは、AAVの生産拡張性に加えて、性能や収率を向上させることが判明しています6。Viralgen社はスペイン・ギプスコア科学技術パークにあり、患者さんの生活を改善する可能性のある新しい治療法の提供を加速することを目指し、製薬会社やバイオテクノロジー企業向けにAAV遺伝子治療薬を製造しています。
Viralgen社の臨床研究施設には、250リットルと500リットルのバイオリアクターを備えたcGMP対応の4つの製造スイートがあります。同社は2020年に、大規模商業生産用の3つのモジュールを備えた新棟を建設し、科学技術パーク内の施設を拡張しました。最新鋭スペースの各モジュールには、2,000リットル以上の製造能力を持つ3つのcGMPスイートが含まれています。完全に自動化された充填・仕上げ作業専用のスイートを含む最初のモジュールは、欧州医薬品庁(EMA)ネットワークの一つとして、スペイン医薬品・医療機器庁(AEMPS)のcGMP認証を取得しています。詳細はviralgenvc.com/をご参照ください。
1. Phosphatase Inhibition by Intracoronary Gene Therapy in Subjects With Non-Ischemic NYHA Class III Heart Failure (GenePHIT). Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05598333. Accessed February 2024.
2. Malik A, Brito D, Vaqar S, Chhabra L. Congestive Heart Failure. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; November 5, 2023.
3. CDC. Heart failure. Centers for Disease Control and Prevention. Published 2022. Available at: https://www.cdc.gov/heartdisease/heart_failure.htm. Accessed February 2024.
4. AHA. Types of Heart Failure. American Heart Association. Published 2023. Available at: https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/what-is-heart-failure/types-of-heart-failure. Accessed February 2024.
5. Savarese G, Lund LH. Global Public Health Burden of Heart Failure. Card Fail Rev. 2017;3(1):7-11. doi:10.15420/cfr.2016:25:2..
6. Grieger JC, Soltys SM, Samulski RJ. Production of Recombinant Adeno-associated Virus Vectors Using Suspension HEK293 Cells and Continuous Harvest of Vector From the Culture Media for GMP FIX and FLT1 Clinical Vector. Mol Ther. 2016;24(2):287-297.
バイエル薬品株式会社
2024年2月28日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
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AskBio社の将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
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