バイエル薬品、遠隔転移を有する前立腺癌の治療薬としてニュベクオ®の適応追加を申請

大阪、2022年3月11日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:フリオ・トリアナ、以下バイエル薬品)は本日、経口アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるニュベクオ®(一般名:ダロルタミド)について、遠隔転移を有する前立腺癌の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の申請を厚生労働省に行いました。

 

本申請は、遠隔転移を有する前立腺癌患者を対象とした第Ⅲ相ARASENS試験のデータに基づくものです。ARASENS試験のデータでは、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示されました。このデータは、2022年2月にサンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器生殖器癌シンポジウム(ASCO GU)で発表されると同時に、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました。ARASENS試験は、遠隔転移を有する前立腺癌患者を対象としてARi+ADT+ドセタキセルの有効性および安全性を、ADT+ドセタキセルと比較した唯一の、前向き、無作為化、多施設共同、二重盲検の第Ⅲ相臨床試験です。

 

ダロルタミドは、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌患者(nmCRPC)の治療薬として、ニュベクオ®の製品名で、米国、欧州連合(EU)、日本および中国など世界の複数の国で承認されています。本製品は、バイエルとフィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行いました。

 

ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、オンコロジー・ストラテジック事業部責任者であるクリスティーン・ロスは次のように述べています。「前立腺癌は、日本人男性にとって最も罹患数の多い癌です1。治療の進歩にもかかわらず、遠隔転移を有する前立腺癌は2〜3年以内に進行します。これは、治療早期の段階で、新たな治療選択肢が必要というアンメット・メディカル・ニーズが存在することを浮き彫りにしています。今回の申請は、遠隔転移を有する前立腺癌の患者さんに、良好な安全性プロファイルを提供しつつ、疾患の進行を遅らせ、生存期間を延長する可能性がある新しい治療を前進させるという、バイエルの前立腺癌に対する取り組みの重要な次の一歩となります」

 

ダロルタミドは転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)の適応で米国とEUで申請中です。その他の国や地域でも、規制当局への申請準備を進めています。本剤は、mHSPCを対象とした第Ⅲ相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌を対象とした他の試験でも検討が進められています。

 

ARASENS試験について

ARASENS試験は、遠隔転移を有する前立腺癌患者を対象として、アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)である経口ダロルタミドを、アンドロゲン遮断療法(ADT)と化学療法のドセタキセルに加えた併用療法の有効性および安全性を検討する、前向きにデザインされた、第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照臨床試験です。新たに診断された1,306名の患者を、標準治療であるADT+ドセタキセルに加えてダロルタミド600mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けました。

 

本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。

 

遠隔転移を有する前立腺癌について

前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました2

 

診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。患者さんの約5%は、初回診断時にすでに遠隔転移が認められます。遠隔転移を有する前立腺癌患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体阻害剤とADTの併用療法、化学療法のドセタキセルとADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどの遠隔転移を有する前立腺癌患者さんは生存期間の限られた去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行します。

 

ニュベクオ®(ダロルタミド)について

ダロルタミドは、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。これにより、受容体機能と前立腺癌細胞の増殖を阻害します。本剤は、遠隔転移を有しない前立腺癌患者(nmCRPC)の治療薬として、ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本、中国を含めた世界の60か国で承認されています。本剤については、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象にした第Ⅲ相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌患者を対象に臨床試験を実施しています。これらの試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。

 

出典:
1.国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
2.Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians.
https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. Accessed March 2022.

 

バイエルにおける前立腺癌について

バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり2、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社について

バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業からなるヘルスケア企業です。医療用医薬品部門では、循環器・腎臓領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に注力しています。コンシューマーヘルス部門では、プレナタルサプリメントや腟カンジダ抗真菌剤に注力しています。同社は、技術革新と革新的な製品によって、日本の患者さんの「満たされない願い」に応える先進医薬品企業を目指しています。詳細はwww.pharma.bayer.jpご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社
2022年3月11日、大阪

将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。