本資料は4月4日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はhttps://media.bayer.comをご参照ください。
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)と2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者における心血管系・腎臓評価項目のリスク低減に関するフィネレノンの新データ
- 心血管系合併症は2型糖尿病を合併するCKD患者の死因の中で最多であり、2型糖尿病を合併するCKDにASCVD疾患が加わると全死亡のリスクが最も高くなる
- ASCVDの既往の有無にかかわらず、2型糖尿病を合併するステージ1-4を含む幅広い重症度のCKD患者における心血管系・腎臓評価項目の発現抑制に対するケレンディア®(フィネレノン)の効果についてFIDELITYの事前規定したサブグループ解析より得られた最新データ
- 事前規定された統合解析FIDELITY(FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験を含む)は2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上を対象に、腎疾患の進行抑制および致死的・非致死的心血管イベントのリスク低減に関してフィネレノンの効果を検討した最大規模の心腎アウトカム第Ⅲ相臨床試験プログラム
ドイツ・ベルリン、2022年4月4日 ― 第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの事前規定された統合解析FIDELITYにおいて、事前規定されたサブグループ解析から得られた最新データより、2型糖尿病を合併する幅広い重症度のCKD患者ではASCVDの既往の有無にかかわらず、フィネレノンを標準治療に上乗せした場合、プラセボと比較して、心血管系および腎臓の複合評価項目の発現リスクを一貫して低減したことが示されました。本サブグループ解析の結果は本日、ACC.22で発表されました。
ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学循環器学教授で、第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの共同治験責任医師であるガラシモス・フィリパトス教授は次のように述べています。「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんでは、心血管系合併症が最も多い死因の1つですが、これらの患者さんの心血管イベントを効果的に抑制したり、低減したりすることを示すデータは現在限られています。フィネレノンに関する既存のエビデンスに基づくこれらのサブグループ解析は、2型糖尿病、CKDや ASCVDを併発している特にリスクの高い患者さんのアウトカムを改善するとともに、ASCVDの既往がない患者さんのイベント発現を抑制するという、この新規治療薬の可能性を示しています」
FIDELITYの解析対象13,026人のうち、5,935人(45.6%)がベースライン時にASCVDの既往がありました。中央値3年の追跡期間において、ASCVDの既往あり群は既往なし群と比べ、心血管系複合評価項目(発現率[100患者年]6.9対3.0;ハザード比[HR]2.09;95%信頼区間[CI]1.89-2.30)、心血管死または心不全による入院(発現率[100患者年]4.51対1.92;HR 2.12;95%CI 1.88-2.40)、全死亡(発現率[100患者年]4.0対2.1;HR 1.72;95%CI 1.52-1.94)の発現率が高くなりました。腎臓複合評価項目においては、ASCVDの既往の有無による違いはありませんでした(発現率[100患者年]2.1対2.4;HR 0.96;95%CI 0.83-1.10)。
事前規定されたFIDELITYのサブグループ解析ではASCVD患者において、フィネレノンはプラセボと比べ、心血管系複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現までのリスクをASCVDの既往あり群(HR 0.83;95%CI 0.74-0.94)、および既往なし群(HR 0.91;95%CI 0.78-1.06;交互作用のP値 0.38)ともに低減させる傾向がみられました。フィネレノンはプラセボと比べ、ASCVDの既往の有無にかかわらず、心血管死または心不全による入院の複合評価項目に関し、発現リスクの低減傾向がみられました(既往あり群、HR 0.82;95%CI 0.71-0.94;既往なし群、HR 0.86;95%CI 0.71-1.04;交互作用のP値 0.68)。
腎臓複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から57%以上の持続的な推算糸球体濾過量[eGFR]低下、腎臓死)の最初の発現に対するフィネレノンの効果については、ASCVDの既往の有無にかかわらず、フィネレノンは腎臓複合評価項目の発現リスクを低減させました(既往あり群、HR 0.71;95%CI 0.57-0.88;既往なし群、HR 0.81;95%CI 0.68-0.97;交互作用のP値 0.33)。
さらに、全死亡に対するフィネレノンの効果は、ASCVDの既往の有無により影響されませんでした(既往あり群、HR 0.85;95%CI 0.74-0.99;既往なし群、HR 0.95;95%CI 0.79-1.14;交互作用のP値 0.38)。フィネレノンの安全性プロファイルは、ASCVDの既往あり群と既往なし群で同程度でした。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、2型糖尿病のみの患者さんと比べ、心血管イベントによる死亡リスクが3倍高いと言われています。つまり、腎障害の重症度は、心血管イベントの発現率の高さと相関しています。2型糖尿病を合併するCKDの幅広い患者さん、特に死亡リスクが最も高いASCVDの患者さんにおいて、フィネレノンが心血管系および腎臓のベネフィットを示すことをうれしく思います」
第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDの結果に基づき、フィネレノンは2022年2月に、欧州連合で2型糖尿病を合併する成人CKD(アルブミン尿を伴うステージ3-4)を対象に、ケレンディアの販売名で販売承認されました。2021年7月にケレンディアは、米国食品医薬品局(FDA)により承認されました。また、第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの結果に基づいて、2022年3月に日本の厚生労働省より承認されました。フィネレノンは世界の複数国で製造販売承認申請が行われており、現在審査中です。
ケレンディア®(フィネレノン)について
ケレンディアは、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。2型糖尿病においてMRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与します。
フィネレノンを用いた第Ⅲ相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF、FIND-CKD、FIONAという5つの第Ⅲ相臨床試験と、第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEで構成されています。
2型糖尿病を合併するCKDを対象としたフィネレノンの第Ⅲ相臨床試験プログラムには、世界中の2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上が無作為割り付けされており、完了して結果発表された2試験で構成されています。2試験では、腎臓および心血管系の両アウトカムに関し、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの効果が検討されました。FIDELIO-DKD(FInerenone in reducing kiDnEy faiLure and dIsease prOgression in Diabetic Kidney Disease)試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者約5,700人を対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制に関して、標準治療に上乗せしたときのフィネレノンの有効性と安全性をプラセボと比較検討しました。FIGARO-DKD(FInerenone in reducinG cArdiovascular moRtality and mOrbidity in Diabetic Kidney Disease)試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者約7,400人を対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関して、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの有効性と安全性を検討しました。
FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験を含むFIDELITY(FInerenone in chronic kiDney diseasE and type 2 diabetes:Combined FIDELIO-DKD and FIGARO-DKD Trial programme analYsis)は、2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムです。事前規定された統合解析FIDELITYは、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、CKDの進行および致死的・非致死的な心血管イベントのリスク低減に関するフィネレノンの有効性と安全性を検討し、CKDステージ(ベースライン時点のKDIGO[Kidney Disease: Improving Global Outcomes]のリスク分類に基づく)と心血管系と腎特有の複合評価項目に対するフィネレノンの効果との関係について知見を示しました。
バイエルは2021年11月に、高度タンパク尿の増加を伴う小児CKD患者約200名を対象に、標準治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性、および薬物動態/薬力学(PK/PD)を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験FIONAの開始を発表しました。
2021年9月には、高血圧や慢性糸球体腎炎(腎臓の炎症)などの非糖尿病性CKD患者1,500人以上を対象に、CKDの進行に関して、ガイドラインで推奨されている治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ臨床試験FIND-CKDの開始を発表しました。
バイエルはまた、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ相床試験FINEARTS-HFの開始を2020年6月に発表しました。本試験は、左室駆出率が維持されている、つまり左室駆出率40%以上の症候性心不全(HF)患者(NYHA心機能分類Ⅱ-Ⅳ度)5,500人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較検討します。本試験の主要目的は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院またはHFによる緊急受診と定義)の複合評価項目の発現率減少に関して、プラセボに対するフィネレノンの優越性を検証することです。
バイエルは2022年2月に、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、フィネレノンとSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、フィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比較検討する3群比較の第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEの開始を発表しました。本試験の主要目的は、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の低下に関し、フィネレノンとエンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、エンパグリフロジン単剤療法またはフィネレノン単剤療法に対する優越性を検証することです。
2型糖尿病を合併するCKDについて
CKDは一般的な疾患であり、死に至る可能性がありますが、広く認知されていません。CKDは静かに、予測不可能に進行し、多くの症状は疾患がかなり進行するまで現れません。CKDは、糖尿病に起因する最も多い合併症の1つであり、心血管疾患の独立した危険因子でもあります。2型糖尿病患者の最大40%がCKDを発症します。ガイドラインに基づく治療にもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者は、CKDの進行および心血管イベント発現のリスクが依然として高いままです。CKDは、世界中で1億6,000万人以上の2型糖尿病患者に影響を及ぼしていると推定されています。2型糖尿病を合併するCKDは、生存のために透析または腎移植を必要とする末期腎不全の主な原因です。2型糖尿病を合併するCKD患者は、2型糖尿病のみの患者さんよりも心血管系疾患で亡くなる可能性が3倍高くなります。
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」をお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメット・メディカル・ニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社について
バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業からなるヘルスケア企業です。医療用医薬品部門では、循環器・腎臓領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に注力しています。コンシューマーヘルス部門では、プレナタルサプリメントや腟カンジダ抗真菌剤に注力しています。同社は、技術革新と革新的な製品によって、日本の患者さんの「満たされない願い」に応える先進医薬品企業を目指しています。詳細はwww.pharma.bayer.jpご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2022年4月7日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。