本資料は8月8日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。
米国FDA、転移性ホルモン感受性前立腺(mHSPC)の治療薬としてダロルタミドとドセタキセルの併用療法の適応追加を承認
- これにより、ダロルタミドは、転移リスクが高い、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)および転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)の両方の治療薬として米国で承認を取得するに至った
- FDAの主導するReal-time Oncology Review(RTOR)パイロットプログラムの下における今回の承認は、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して有意な全生存期間(OS)の延長を示した、第Ⅲ相ARASENS試験の結果に基づくものである
- ダロルタミドはドセタキセルとの併用療法で承認された唯一のアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であり、ドセタキセル単剤と比較して死亡リスクを32.5%低減、また忍容性プロファイルが示されている
ベルリン、2022年8月8日 ― ドイツ・バイエル社は本日、米国食品医薬品局(FDA)が転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)の治療薬として、経口アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミドとドセタキセルの併用療法の適応追加の医薬品承認事項変更申請(supplemental New Drug Application:sNDA)を承認したことを発表しました。
今回の承認は、第Ⅲ相ARASENS試験の良好な結果に基づくものであり、同試験では、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することを示しました。これらの結果は、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました。ダロルタミドは、転移リスクが高い、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)患者の治療薬として、ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本、中国を含めた世界の70以上の地域で承認されています。本製品は、さまざまな病期の前立腺癌を対象とした他の試験でも検討が進められています。
マサチューセッツ総合病院がんセンターの泌尿生殖器悪性腫瘍プログラム責任者であるマシュー・スミス医師は次のように述べています。「ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法は、mHSPC患者さんにおいて全生存期間を有意に延長し、同時に良好な安全性プロファイルを示しています。ダロルタミドの今回の適応追加は、これまでにも実証されてきた本剤の良好な忍容性を有し、患者さんに新たな治療選択肢を提供できるものであるため、特に意義が深いものです」
前立腺癌は、米国の男性において現在も2番目に多い癌関連死の原因となっており、最大で3分の1の患者さんが転移性前立腺癌に進行します1、2。mHSPCに進行する率は、米国において過去10年間で72%増加しています3。mHSPCと診断された患者さんの3人に1人は5年以上の生存が確認されていますが、ほとんどの場合去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行します2、3。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、バイエルのオンコロジー・ストラテジック事業部責任者であるクリスティーン・ロスは次のように述べています。「第Ⅲ相ARASENS試験およびARAMIS試験から得られた説得力のあるデータにより、ダロルタミドはリスクが高いnmCRPC患者さんの他に、mHSPC患者さんにおいても意義のある有効性と良好な忍容性を示しており、その使用はさらに広範囲な患者さんに拡大しています。今回の承認は、適応となる患者さんに信頼性の高い治療選択肢を提供するという、さまざまな病期の前立腺癌患者さんに対するバイエルの取り組みを再確認するものです」
前立腺癌財団(PCF)の会長兼CEOであるチャールズ・ジェイ・ライアン医師は次のように述べています。「前立腺癌は米国男性において最も多い癌であり、限局性前立腺癌と比較してmHSPCと診断された患者さんの生存率は劇的に低下します。今回の承認により、mHSPC患者さんとその医師に、異なる治療法の選択肢がさらに追加されることになります」
本申請は、FDAより優先審査の指定を受け、FDA主導のReal-Time Oncology Review(RTOR)パイロットプログラムの下で承認されました。同プログラムは、申請のより効率的な審査プロセスを実現し、安全かつ効果的ながん治療法を可能な限り速やかに患者さんに提供することを目的としてます。継続中の審査は、FDAの腫瘍学研究拠点(OCE)が主導するProject Orbisの下でも実施されています。同プロジェクトに参加している各国の規制当局において、癌治療薬の同時申請および審査の枠組みを構築しています。
ダロルタミドは、バイエルとフィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行いました。
ARASENS試験について
ARASENS試験は、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者を対象とした、経口の第2世代アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルによる化学療法との併用療法とADT+ドセタキセル(海外のガイドラインで推奨されている標準治療)を比較検討する、前向きにデザインされた、唯一の第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検臨床試験です。1,306名のmHSPC患者が、ADT+ドセタキセルに加えてダロルタミド600mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けられました。
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。本試験の結果は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました4。ARASENS試験では、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することを示しました4。各副次評価項目の改善は、主要評価項目である生存期間の延長を補足するものです4。
転移性ホルモン感受性前立腺癌について
前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました5。
診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科的手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体阻害剤とADTの併用療法、ドセタキセルによる化学療法とADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどのmHSPC患者さんは、最終的に生存期間の限られた去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行します。
ニュベクオ®(ダロルタミド)について
ダロルタミドは、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。これにより、受容体機能と前立腺癌細胞の増殖を阻害します。本剤は、転移リスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺癌患者(nmCRPC)の治療薬として、 ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本、中国を含めた世界の70以上の地域で承認されています。本剤については、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象とした第Ⅲ相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の国際共同第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌患者を対象に臨床試験を実施しています。これらの試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。
バイエルにおける前立腺癌について
バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり1、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。
出典:
1. Siegel DA, O’Neil ME, Richards TB, Dowling NF, Weir HK. Prostate Cancer Incidence and Survival, by Stage and Race/Ethnicity — United States, 2001–2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:1473–1480. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6941a1.
2. Ng, K., Smith, S., Shamash, J. Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer (mHSPC): Advances and Treatment Strategies in the First-Line Setting. Oncol Ther 8, 209–230 (2020). https://doi.org/10.1007/s40487-020-00119-z.
3. Hahn AW, Higano CS, Taplin ME, Ryan CJ, Agarwal N. Metastatic Castration-Sensitive Prostate Cancer: Optimizing Patient Selection and Treatment. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2018 May 23;38:363-371. https://doi.org/10.1200/edbk_200967
4. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and Survival in Metastatic, Hormone-Sensitive Prostate Cancer. N Engl J Med. 2022
5. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. 2022年5月にアクセス
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2022年8月23日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。