眼科用VEGF阻害剤「アイリーア®硝子体内注射液40mg/mL」6つ目の適応症となる未熟児網膜症の適応追加承認を取得

大阪、2022年9月26日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、以下バイエル薬品)と参天製薬株式会社(本社:大阪市、以下Santen)は本日、バイエル薬品が申請していた眼科用VEGF*阻害剤「アイリーア®硝子体内注射液40mg/mL」[アフリベルセプト(遺伝子組換え)硝子体内注射液、以下、アイリーア®]について、未熟児網膜症(ROP: retinopathy of prematurity)の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことをお知らせします。

*VEGF=血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)

 

アイリーア®はこれまでに、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫および血管新生緑内障の適応を日本国内で取得しており、今回のROPは6つ目の適応となります。

 

日本人を含むROP患者を対象としたアイリーア®の硝子体内投与による有効性および安全性を検討した国際共同第III相試験であるFIREFLEYE試験の結果に基づき承認されました。本試験の結果は、医学誌ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)に掲載されました。

 

ROPは、未熟児の網膜に発現する血管疾患で、小児における視覚障害や失明の原因疾患の一つです1,2。国内の患者数は年間約5,000名と報告されており3、軽度のROPは自然に治癒しますが、重度のROPは適時の治療が必要です。

 

日本小児眼科学会の東範行理事長は、次のように述べています。「周産期医療が発達したことで、より多くの未熟児の命が助かるようになり、ROPの症例数が増え、重症例も増加しています。ROPは、重篤な視力障害や失明にいたる可能性がある疾患で、適時の治療が非常に重要です。既存の治療に加えて、アイリーア®が新たな選択肢として加わることは、患者さんと医療従事者にとって有益なことと思います。」

 

日本国内でのアイリーア®の販売はSantenが行い、本剤の製造販売承認はバイエル薬品が保有します。本剤の医薬品情報提供活動は両社が共同で実施いたします。

<アイリーア®硝子体内注射液40mg/mLの製品概要> (今回追記分は下線部分)
販売名 アイリーア®硝子体内注射液40mg/mL
一般名 アフリベルセプト(遺伝子組換え)
効能・効果

中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
病的近視における脈絡膜新生血管
糖尿病黄斑浮腫
血管新生緑内障
未熟児網膜症

用法・用量

中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに 1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を 適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。

網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子 体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。

糖尿病黄斑浮腫
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続5回硝子体内投与する。その後は、通常、2ヵ月ごとに1回、硝 子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以 上あけること。

血管新生緑内障
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回、2mg(0.05mL)を硝子体内投与する。なお、必要な場合は再投与できるが、1ヵ月以上の間隔をあけること。

未熟児網膜症
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回、0.4mg(0.01mL)を硝子体内投与する。なお、必要な場合は再投与できるが、1ヵ月以上の間隔をあけること。

製造販売承認日 2012年9月28日
効能・効果追加承認日

網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
2013年11月22日
病的近視における脈絡膜新生血管
2014年9月19日
糖尿病黄斑浮腫
2014年11月18日
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
2015年6月26日
血管新生緑内障
2020年3月25日
未熟児網膜症
2022年9月26日

製造販売元 バイエル薬品株式会社
発売元 参天製薬株式会社
FIREFLEYE試験について

FIREFLEYE試験は、未熟児網膜症(ROP)患者に対するアイリーア®の有効性と安全性を、標準治療である網膜光凝固術と比較検討した国際共同第III相試験です。アイリーア®は、日本人を含むROP患者113例に対して良好なベネフィット・リスクプロファイルを示しました。日本以外における成功基準として、アイリーア®0.4mg群の網膜光凝固術群に対する非劣性を検証したところ、網膜光凝固術群の奏効確率82.1%に対し、アイリーア®0.4 mg群では85.5%でしたが、アイリーア®0.4 mg群の網膜光凝固術群に対する非劣性は検証されませんでした(奏効確率の群間差90%信用区間:−8.0%~+16.2%)。一方で、日本における成功基準に対しては、事前に設定した閾値66%に対し、アイリーア®0.4 mg群の奏効割合(両側95%信頼区間)は82.7%(72.2%~90.4%)でした。アイリーア®0.4 mg群の奏効割合の信頼区間の下限値が66%を上回ったことにより、事前に規定した閾値に対する優越性が検証されました。安全性については既承認適応症における安全性プロファイルと同様の結果を得ました。

 

未熟児網膜症(ROP)について

未熟児網膜症(ROP)は、早産児の未熟な網膜に発現する血管疾患です。主な発症リスク因子は、短い在胎週数や低出生体重などで、不完全な血管の発育により眼内の血管内皮増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)の発現亢進や異常な血管増殖を引き起こします。通常、軽度のROPは自然に治癒しますが、重度のROPは視力低下や失明にいたるおそれがあるため、適時の治療が必要です。

 

血管内皮増殖因子(VEGF)とアイリーア®(アフリベルセプト硝子体内注射液)について

血管内皮増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)は、生体内に存在する天然のタンパク質で、組織や器官の成長を支える新しい血管の形成(血管新生)を促す役割を果たします。一方で、眼内における異常な血管新生にも関与しており、血管透過性が異常に亢進することで、浮腫を誘発します。

アイリーア®は、ヒトVEGF受容体1と受容体2の細胞外ドメインの一部をヒトIgG1のFcドメインと融合させた遺伝子組換え融合糖タンパク質で、アフリベルセプト硝子体内注射液は硝子体内への投与が可能となるよう等張化された注射液として開発されました。アイリーア®は、可溶性のデコイ(おとりの)受容体としてVEGFの一種であるVEGF-Aと胎盤成長因子(PlGF: placental growth factor)に結合することにより、本来のVEGF受容体への結合および活性化を阻害することができます。

バイエル社とリジェネロン社は、アイリーア®の国際共同開発を行っています。リジェネロン社はアイリーア®の米国内での独占販売権を保有しています。バイエル社は米国以外での独占販売権を有し、その利益は両社で均等分配されます。日本は例外で、リジェネロン社は日本での売上に応じて一定割合を受け取ります。

 

出典
1) 平成18年身体障害児・者実態調査結果(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/dl/01.pdf
2) 全国視覚特別支援学校及び小・中学校弱視学級児童生徒の視覚障害原因等に関する調査研究 -2015年度調査- 報告書http://www.human.tsukuba.ac.jp/~kakizawa/images/pdf/report.pdf
3) 難病情報センター, 未熟児網膜症,平成21 年(http://www.nanbyou.or.jp/entry/621、2019年11月21日)

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社について

バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業からなるヘルスケア企業です。医療用医薬品部門では、循環器・腎臓領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に注力しています。コンシューマーヘルス部門では、プレナタルサプリメントや腟カンジダ抗真菌剤に注力しています。同社は、技術革新と革新的な製品によって、日本の患者さんの「満たされない願い」に応える先進医薬品企業を目指しています。詳細はwww.pharma.bayer.jpご参照ください。

 

参天製薬株式会社について

Santenは、眼科に特化したスペシャリティ・カンパニーとして、医療用・一般用の医薬品や、医療機器の研究、開発、販売・ マーケティング活動を行っており、世界約60を超える国・地域で製品を販売しています。
Santenが目指す理想の世界、「WORLD VISION」(Happiness with Vision)の実現に向け、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、「見る」を通じて人々の幸せを実現するSocial Innovatorとして、眼の疾患や不具合に起因する世界中の人々の社会的・経済的な機会損失を削減することを目指します。
130年の歴史の中で培われた科学的知見や企業力を活かし、製薬企業としての枠を越え、患者さん起点で眼科医療ソリューションの開発と提供に取り組み、価値ある製品・サービスの提供を通じ、患者さんや患者さんを愛する人たちを中心に社会への貢献を果たしていきます。
詳細については、当社ホームページhttps://www.santen.com/ja/をご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社、参天製薬株式会社
2022年9月26日、大阪

将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。