本資料は1月27日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。
バイエルのダロルタミド、転移性ホルモン感受性前立腺癌の治療薬として欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)より承認勧告
- CHMPの承認勧告は、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT + ドセタキセルのみの併用療法と比較して、両投与群で同様の有害事象(AE)の発現率を示しつつ、死亡リスクで32.5%の有意な低下が示された第Ⅲ相試験の結果に基づくものである
- 欧州委員会は今後数カ月以内にダロルタミドの製造販売承認を決定する見込み
ベルリン、2023年1月27日 ― 欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)は、経口アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミドについて、アンドロゲン遮断療法(ADT)およびドセタキセルの併用療法で、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者の治療薬として欧州連合(EU)における製造販売承認を勧告しました。ダロルタミドは、転移リスクが高い遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)患者の治療薬として、ニュベクオ®の製品名ですでに承認されています。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、バイエルのオンコロジー・ストラテジック事業部責任者であるクリスティーン・ロスは次のように述べています。「CHMPの今回の肯定的な見解は、ダロルタミドが適応となる前立腺癌患者さんの新たな標準治療となる可能性を明確に示すものです。ダロルタミドの投与によって、mHSPCおよび高リスクのnmCRPCの両方において新たな生存データが得られ、患者さんの日常生活における障害が最小限に抑えられたことから、規制当局による販売承認後は、可能な限り多くの患者さんにダロルタミドのベネフィットを確実に届けられるよう、注力してまいります。今回の勧告は、さまざまな病期の前立腺癌患者さんにおいて、疾患と共に生きることの意味を再定義するという当社のミッションをさらに一歩前進させるものです。」
ベルギーのブリュッセルに位置するルーヴァン・カトリック大学(the Université catholique de Louvain:UCL)、サンリュック大学病院泌尿器科のベルトラン・トンバル教授は次のように述べています。「大きな進展はありましたが、多くのmHSPC患者さんにとって疾患進行と消耗性の症状の発現は現在もごく当たり前に起きることです。したがって、死亡率を改善するだけでなく症状進行までの期間を遅らせることのできる治療選択肢に、これらの患者さんがアクセスできるようになることは非常に重要です。ARASENS試験は、全体的な有害事象の発現率をプラセボ群と同様の水準に維持しつつ、死亡リスクの低減と生活の質の低下を最小限に抑えることの両方において、ADTおよびドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法のベネフィットを示した初めての試験です。」
欧州委員会は、今後数カ月以内に製造販売承認の最終決定を行う見込みです。本剤は、2つめの適応症であるmHSPCの治療薬として、ニュベクオ®の製品名で、すでに米国を含む多くの国や地域で承認を取得しています。その他の国や地域の規制当局に対する製造販売承認は、申請中または申請予定です。また、ダロルタミドについて、新たに進行中または計画中の大規模臨床試験3試験を含む広範囲な開発プログラムを実施しており、前立腺癌の早期から後期までのさまざまな病期の患者さんを通してダロルタミドの可能性の検討を進めています。このプログラムには、mHSPCを対象としてダロルタミド+ADTとADT単独を比較評価した第Ⅲ相試験であるARANOTE試験などが含まれます。
前立腺癌は、北欧および西欧のほとんど全ての国において男性で最も多くみられる癌であり1、mHSPC患者の5年以上の生存率はわずか30%です2。ほとんどのmHSPC患者さんは、最終的に予後不良な転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に進行します3,4。
ダロルタミドは、バイエルと、フィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行っています。バイエルは世界における本製品の販売に責任を有しており、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国、スカンジナビアおよびフィンランドなどの特定の欧州市場では、バイエルとオリオン・コーポレーションが共同プロモーションを行っています。
ARASENS試験について
ARASENS試験は、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者を対象とした、第2世代アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)である経口ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルに加えた併用療法とADT+ドセタキセルの併用療法(海外のガイドラインで推奨されている標準治療)を比較検討するために、前向きにデザインされた、唯一の第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検臨床試験です。1,306名のmHSPC患者が、ADT+ドセタキセルに加えてダロルタミド600 mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けました。
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。本試験の結果は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)5に掲載されました。ARASENS試験では、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスを有意に32.5%低減することが示されました5。副次評価項目の改善は、主要評価項目である全生存期間の延長を補足するものでした5。
転移性ホルモン感受性前立腺癌について
前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました6。
診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。遠隔転移を有する前立腺癌患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体経路阻害剤とADTの併用療法、化学療法のドセタキセルとADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどの遠隔転移を有する前立腺癌患者さんは予後不良な転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に進行します。
ニュベクオ®(ダロルタミド)について
ダロルタミドは、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。これにより、受容体機能と前立腺癌細胞の増殖を阻害します。本剤は、遠隔転移を有しない前立腺癌患者(nmCRPC)の治療薬として、ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本および中国を含む世界の75以上の国や地域で承認されています。本剤については、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象とした治療薬としても米国を含む多くの国や地域で承認を受けています。その他の国や地域の規制当局に対する製造販売承認は、申請中または申請予定です。本剤は、海外では転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象とした第Ⅲ相試験であるARANOTE試験や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の国際共同第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌患者を対象に臨床試験を実施しています。これらの臨床試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。さらに、外科手術や放射線療法後に前立腺特異抗原(PSA)値の上昇が認められた患者さんを対象として、早期のダロルタミド投与による治療の可能性を検討する試験も計画されています。
バイエルにおける前立腺癌について
バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり1、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。
出典:
1. The Cancer Atlas: Europe. 2018. https://canceratlas.cancer.org/the-burden/europe/. Accessed December 2022.
2. Ng, K., Smith, S., Shamash, J. Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer (mHSPC): Advances and Treatment Strategies in the First-Line Setting. Oncol Ther. 2020;8:209–230. https://doi.org/10.1007/s40487-020-00119-z .
3. Siegel DA, O’Neil ME, Richards TB, Dowling NF, Weir HK. Prostate Cancer Incidence and Survival, by Stage and Race/Ethnicity — United States, 2001–2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69:1473–1480. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6941a1
4. Hahn AW, Higano CS, Taplin ME, Ryan CJ, Agarwal N. Metastatic Castration-Sensitive Prostate Cancer: Optimizing Patient Selection and Treatment. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2018 May 23;38:363-371. https://doi.org/10.1200/edbk_200967.
5. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and Survival in Metastatic, Hormone-Sensitive Prostate Cancer. N Engl J Med. 2022; 386:1132–1142.
6. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. Accessed December 2022
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2023年2月2日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
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