本資料は3月1日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。

ニュベクオ®(ダロルタミド)がEUで前立腺癌の適応追加承認を取得

  • 欧州委員会は遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者の治療薬としてニュベクオ®(ダロルタミド)を承認
  • 第III相ARASENS試験データに基づき承認

 

ベルリン、2023年3月1日 ― 欧州委員会は欧州連合(EU)において、遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者さんの治療薬として、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルに併用する経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)ニュベクオ®(ダロルタミド)の販売を承認しました。ニュベクオは、転移発生のリスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)患者さんの治療薬として、既に承認されています。

 

ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、オンコロジー・ストラテジック事業部責任者であるクリスティーン・ロスは次のように述べています。「今日のニュベクオの承認は、欧州における遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺癌患者さんのアンメット・メディカル・ニーズへの取組みにおける重要なマイルストーンです。私たちは、あらゆる病期の前立腺癌治療の改善に尽力しており、患者さんとその家族にとって、生活の質が生存期間の延長や疾患進行の遅延と同じくらい重要であることを認識しています。私たちは引き続き、前立腺癌と共に生きる意味を再定義することをミッションとしています」

 

EUにおける承認は、mHSPCの患者さんにおいて、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示された第III相ARASENS試験の良好な結果に基づいています。また、ダロルタミド併用療法は臨床的に重要な副次評価項目全体で一貫したベネフィットを示し、試験治療下における有害事象の全体的な発現率は投与群間で同程度でした。

 

ルーヴァン・カトリック大学(UCL)附属サン・リュック大学病院(ベルギー、ブリュッセル)泌尿器科教授であるBertrand Tombal教授は次のように述べています。「欧州におけるmHSPCを対象とするニュベクオの承認は、患者さんとその治療医にとって大きな前進です。利用可能な治療選択肢が拡大し、前立腺癌と共に生きる人々の臨床転帰を改善する我々の能力を拡大するものです。今回の承認は、ARASENS臨床試験の顕著なデータによって裏付けられています。この試験では、遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺癌患者さんにおいて、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えることで、生存期間を延長し、疾患進行を遅延させ、生活の質を維持するベネフィットが示されています」

 

前立腺癌は、ほぼすべての北欧および西欧諸国の男性において最も多く診断される癌です1。診断後5年以上生存するのは、mHSPC男性のわずか30%です2。mHSPC男性のほとんどは最終的に予後不良な転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に進行します3,4

 

新たに進行中または計画中の大規模臨床試験3試験を含む広範囲な開発プログラムを実施しており、前立腺癌の早期から後期までのさまざまな病期の患者さんを通してニュベクオの可能性の検討を進めています。このプログラムには、mHSPCを対象としてダロルタミド+ADTとADT単独を比較評価する海外の第III相試験であるARANOTE試験などが含まれます。

 

ニュベクオは、バイエルと、フィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行っています。バイエルはグローバルの商業化に責任を負い、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国、スカンジナビア、フィンランドなど特定の欧州市場においてバイエルとオリオン・コーポレーションの共同プロモーションを行っています。

【ARASENS試験について】

ARASENS試験は、遠隔転移を有する前立腺癌患者を対象として、経口の第2世代アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミドにアンドロゲン遮断療法(ADT)と化学療法のドセタキセルを加えた併用療法の有効性および安全性を、海外のガイドラインで推奨される標準治療のひとつであるADT+ドセタキセルの併用療法と比較検討する、前向きにデザインされた、唯一の第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照臨床試験です。新たに診断された1,306名の患者を、標準治療であるADT+ドセタキセルに加えてダロルタミド600mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けました。本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。本試験の結果は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました5。これらのデータを簡潔にまとめた出版物がフューチャー・オンコロジーに掲載されました6。ARASENS試験では、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示されました5。各副次評価項目の改善は、主要評価項目である生存期間の延長を補足するものでした5

【遠隔転移を有する前立腺癌について】

前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました7。診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。遠隔転移を有する前立腺癌患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体阻害剤+ADTまたはドセタキセルとADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどの遠隔転移を有する前立腺癌患者さんは予後不良な去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)への進行を経験します。

【ニュベクオ®(ダロルタミド)について】

ニュベクオ®(ダロルタミド)は、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。ダロルタミドが血液脳関門を通過する可能性が低いことは、非臨床モデルおよび健康なヒトを対象とした神経画像データにより裏付けられています。これは、第III相ARAMIS試験で認められたように、中枢神経系(CNS)に関連した有害事象(AE)の発現率がプラセボと比較して全般的に低いことと、第II相ODENZA試験のダロルタミド群で認められた言語学習および言語記憶の改善によって裏付けられています8。本製品は、転移発生のリスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)患者さんの治療薬として、米国、EU、日本、中国など世界80カ国以上で承認されています。また、米国や日本などのいくつかの市場では、遠隔転移を有するホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者さんの治療薬としても承認されています。その他の国や地域の規制当局に対する製造販売承認は、申請中または申請予定です。バイエルは、ニュベクオのピーク売上高が30億ユーロを超えると予想しています。本化合物については海外で、mHSPCを対象としてダロルタミド+アンドロゲン除去療法(ADT)の併用療法とADT単独とを比較評価する第III相試験であるARANOTE試験や、再発の可能性が非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するオーストラリア・ニュージーランド泌尿生殖器・前立腺癌治験グループ(ANZUP)が主導する国際第III相共同グループDASL-HiCaP(ANZUP1801)試験など、さまざまな病期の前立腺癌を対象としたさらなる試験での検討も進められています。これらの試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。さらに、外科手術や放射線療法後に前立腺特異抗原(PSA)値の上昇が認められた患者さんを対象として、早期のダロルタミド投与による治療の可能性を検討する試験も計画されています。

出典:
1. The Cancer Atlas: Europe. 2018. https://canceratlas.cancer.org/the-burden/europe/https://canceratlas.cancer.org/the- burden/europe/. Accessed December 2022.
2. Ng, K., Smith, S., Shamash, J. Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer (mHSPC): Advances and Treatment Strategies in the First-Line Setting. Oncol Ther. 2020;8:209–230. https://doi.org/10.1007/s40487-020-00119-z.
3. Siegel DA, O’Neil ME, Richards TB, Dowling NF, Weir HK. Prostate Cancer Incidence and Survival, by Stage and Race/Ethnicity — United States, 2001–2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69:1473–1480. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6941a1.
4. Hahn AW, Higano CS, Taplin ME, Ryan CJ, Agarwal N. Metastatic Castration-Sensitive Prostate Cancer: Optimizing Patient Selection and Treatment. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2018 May 23;38:363-371. https://doi.org/10.1200/edbk_200967.
5. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and Survival in Metastatic, Hormone-Sensitive Prostate Cancer. N Engl J Med. 2022; 386:1132–1142.
6. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and survival in metastatic, hormone-sensitive prostate cancer: a patient and caregiver perspective and plain language summary of the ARASENS trial. Future Oncol. 2022;18:21:2585-2597. https://doi.org/10.2217/fon-2022-0433
7. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: Cancer J Clin. 2021;71:209–249. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. Accessed December 2022.
8. Colomba E. et al. ODENZA: A French prospective, randomized, open-label, multicenter, cross-over phase II trial of preference between darolutamide and enzalutamide in men with asymptomatic or mildly symptomatic metastatic castrate- resistant prostate cancer (CRPC). J Clin Onc 2021; 39 (15_suppl): 5046-5046.

【バイエルにおける前立腺癌について】

バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり7、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。

 

【バイエルについて】

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

 

 

バイエル薬品株式会社
2023年3月14日、大阪

将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。