本資料は4月18日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
うっ血性心不全を対象にAskBio社が開発中のAB-1002遺伝子治療プログラムを米国食品医薬品局(FDA)がファストトラック指定
- AB-1002はニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度の心不全症状を有する成人非虚血性心筋症患者の遺伝子治療薬として臨床試験が進行中
- うっ血性心不全治療薬AB-1002の第Ⅱ相臨床試験GenePHITにAskBio社が被験者を組み入れ中
ドイツ・ベルリン、米国・ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、2024年4月18日 ― ドイツ・バイエル社と、当社の完全子会社で独立経営の遺伝子治療企業であるAsklepios BioPharmaceutical(以下、AskBio)社は、AB-1002プログラムが米国FDAよりファストトラック指定を受けたことを本日発表しました。AB-1002は、プロテインホスファターゼ1の機能を阻害するインヒビタープロテイン1(I-1c)の構成的活性型の産生促進を目的に、心臓に1回限り投与する遺伝子治療薬として開発されています。うっ血性心不全に関係するプロテインホスファターゼ1の機能を阻害することにより、心臓の治療効果につながる可能性があります1,2。
AskBio社チーフ・ディベロップメント・オフィサーでチーフ・メディカル・オフィサーのキャンウェン・チアンは次のように述べています。「AB-1002のFDAによるファストトラック指定は、本プログラムの臨床開発にとって重要な成果であり、進行したうっ血性心不全の患者さんに効果的な治療法を提供するというわれわれの目標の重要性を示しています。現在、重症の心不全患者さんの組み入れを進めている第Ⅱ相臨床試験GenePHITの完了を心待ちにしており、この深刻な疾患の治療に対するAB-1002の可能性を最大限に追求してまいります」
FDAのファストトラックプログラムは、重篤な疾患の治療やアンメットメディカルニーズを満たす新規治療薬の開発を促進し、審査を迅速化するために作られました3。本プログラムの目的は、重要な新規治療薬をより早く患者さんに届けることです3。本指定を受けた治療薬は、開発計画についてFDAとより頻繁に検討を行い、関連する基準を満たした場合は、迅速承認や優先審査の対象となる可能性があります。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者のクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「AB-1002のファストトラック指定は、うっ血性心不全患者に対する遺伝子治療のような新しい治療手段の開発を迅速に進める必要性を強調しています。今回の指定は、AB-1002が現在の高いアンメットメディカルニーズに対応する可能性を支持しており、開発を加速させる機会を得たことをうれしく思います」
AB-1002は治験段階の遺伝子治療薬であり、製造販売承認を受けていないため、その有効性と安全性は確立されておらず、十分に評価されていません。AskBio社は現在、うっ血性心不全治療薬AB-1002(NAN-101)の第Ⅱ相臨床試験GenePHIT(Gene Phosphatase Inhibition Therapy)に被験者を組み入れています4。
【GenePHITについて】
GenePHIT試験は、アダプティブ、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、多施設共同、第Ⅱ相臨床試験です。非虚血性心筋症でNYHA心機能分類Ⅲ度の心不全症状を有する18歳以上の男女を対象に、AB-1002を単回冠動脈内投与したときの安全性と有効性を評価します4。被験者は低用量、高用量、プラセボの3つの治療群のいずれかに、1対1対1の割合で無作為割り付けされます。主要評価項目には、心血管死のほか、NYHA心機能分類、左室駆出率(LVEF)、最高酸素摂取量(pVO2)、6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化が含まれます4。詳細については、clinicaltrials.gov(NCT#05598333)、またはaskbio.comを参照ください。
【うっ血性心不全について】
心不全は、臓器への十分な酸素供給など、心臓が身体の需要に見合う十分な血液を効率的に送り出せなくなった場合に起こります5。うっ血性心不全では、心臓から送り出される血液の流れが遅くなり、静脈を通って心臓に戻る血液が逆流します6。その結果、身体の組織がうっ血します。症状としては、脚や足首のむくみがあります。肺に水が溜まって呼吸が妨げられることもあります。世界で約2,600万人がうっ血性心不全に罹患しています7。
1. Fish KM, Ladage D, Kawase Y, et al. AAV9.I-1c delivered via direct coronary infusion in a porcine model of heart failure improves contractility and mitigates adverse remodeling. Circ Heart Fail. 2013;6(2):310-317.
2. Pathak A, del Monte F, Zhao W, et al. Enhancement of cardiac function and suppression of heart failure progression by inhibition of protein phosphatase 1. Circ Res. 2005;96(7):756-766.
3. US FDA – Fast Track. Available at: https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/fast-track. Accessed April 2024.
4. Phosphatase Inhibition by Intracoronary Gene Therapy in Subjects With Non-Ischemic NYHA Class III Heart Failure (GenePHIT). Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05598333. Accessed April 2024.
5. CDC. Heart failure. Centers for Disease Control and Prevention. Published 2022. Available at: https://www.cdc.gov/heartdisease/heart_failure.htm. Accessed April 2024.
6. American Heart Association: Types of Heart Failure. Available at: https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/what-is-heart-failure/types-of-heart-failure. April 2024
7. Savarese G, Lund LH. Global Public Health Burden of Heart Failure. Card Fail Rev. 2017;3(1):7-11. doi:10.15420/cfr.2016:25:2.
AskBio社について
Asklepios BioPharmaceutical(以下、AskBio)社はドイツ・バイエル社の完全子会社で、独立経営の企業であり、生命を救う医薬品を開発し、人々の生活を変えることに特化した遺伝子治療企業です。AskBio社は、臨床試験段階のパイプラインとして神経筋疾患、中枢神経系疾患、心血管疾患、代謝性疾患を適応症とする幅広い臨床試験プログラムのポートフォリオを有しており、その中にはうっ血性心不全、ハンチントン病、肢帯状筋ジストロフィー、多系統萎縮症、パーキンソン病、ポンペ病の治療薬が含まれています。AskBio社の遺伝子治療プラットフォームは、業界をリードする独自の細胞株産生プロセスであるPro10™や豊富なカプシドライブラリー、プロモーターライブラリーなどがあります。AskBio社は米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにグローバル本社、スコットランド・エディンバラに欧州本社を置き、数百もの独自のカプシドやプロモーターを創製し、そのうちのいくつかは前臨床試験や臨床試験に入っています。遺伝子治療分野における初期のイノベーターであり、5カ国に900人以上の従業員を擁し、アデノ随伴ウイルス(AAV)生産やキメラカプシドなどの分野で、800件以上の特許および特許出願を保有しています。詳細はwww.askbio.comをご参照、またはLinkedInでフォローしてください。
バイエル薬品株式会社について
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名(2023年)。特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2024年4月26日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。