本資料は6月25日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
AskBio社、パーキンソン病を対象とした第Ⅱ相試験の被験者募集を開始
- 現在被験者登録中であるREGENERATE-PDでは、中等度パーキンソン病を対象としたアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)によるグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)遺伝子治療用製品AB-1005を研究
- 2024年1月にAB-1005の第Ib相試験において主要評価項目を達成したことに続き、4月に米国神経学会(AAN)で投与後18か月の結果を発表
- 米国で被験者登録を開始し、その後英国と欧州で臨床試験実施施設を開設
米国・ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、2024年6月25日 ― ドイツ・バイエル社の完全子会社で独立経営の遺伝子治療企業であるAsklepios BioPharmaceutical社(本社:米国ノースカロライナ州、以下、AskBio社)は、本日、第Ⅱ相臨床試験REGENERATE-PDにおいて、被験者登録を開始したことを発表しました。本試験では中等度パーキンソン病に対するアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)を用いたグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)遺伝子治療用製品として開発中のAB-1005の有効性と安全性を評価します。
ブリストル医科大学運動障害の Consultant Senior Lecturer であり、英国ノース・ブリストル・トラストの名誉顧問神経内科医 であるアラン・ホーン博士は次のように述べています。「グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)遺伝子治療は、内因性の成長因子のレベルを高めることで、パーキンソン病で変性する脆弱な脳細胞の生存と機能を促進することを目的としています。AB-1005開発の進展は、パーキンソン病の遺伝子治療開発における重要なマイルストーンであり、有効な治療法を患者さんに一歩近づける可能性を秘めています」
ホーン博士は、REGENERATE-PDが英国で開始されたのちには、欧州の主任研究者(PI)として活動します。
パーキンソン財団によると、世界中で1,000万人以上がパーキンソン病に罹患しているといわれています1。
AskBio社パーキンソン病・多系統萎縮症サイエンティフィックチェアのクリストフ・バンキェヴィッチは、次のように述べています。「第Ib相試験で良好な結果が得られ、本年4月に開催された米国神経学会(AAN)で投与後18カ月間のデータが発表されたことを受け、AB-1005をより大規模な第Ⅱ相臨床試験へと進めることができることを大変嬉しく思っています。この最新の開発進展は、AB-1005がパーキンソン病患者さんの治療に変革をもたらす可能性があるという私たちの自信を示すものです」
AskBio社は本年1月、AB-1005の第Ib相試験において主要評価項目を達成したことを発表しました。同試験の主要評価項目は、AB-1005 を両側被殻に1 度だけ直接投与した場合の安全性を評価することでした。このパーキンソン病を対象とした遺伝子治療用製品の忍容性は良好で、18カ月時点で11人の患者全員においてAB-1005に関連すると考えられる重篤な有害事象は認められませんでした2。
AskBio社は、パーキンソン病以外の疾患に対してもGDNF療法を探索しており、現在、米国で多系統萎縮症のパーキンソニズム型サブタイプ (MSA-P)の患者さんを第1相試験に登録し、急速に進行するこの疾患に対するGDNF療法の安全性、忍容性、有効性を予備的に評価しています3。
AB-1005は、いずれの規制当局からも承認されていない開発中の遺伝子治療用製品であり、その有効性と安全性は確立されておらず、十分に評価されていません。
パーキンソン病について
パーキンソン病は、脳内の神経細胞の損傷により、ドーパミン分泌量が低下することによって引き起こされる進行性の神経変性疾患です4。診断時点では、患者さんはすでにドーパミン作動性ニューロンの50~80%を失っていると推定されています5。これらのニューロンが失われると徐々に運動機能が低下し、振戦、筋固縮、動作緩慢などの症状が現れます6。パーキンソン財団によると、世界中で1,000万人以上がパーキンソン病に罹患しており、そのうち約100万人が米国でみられます1。根治療法は存在しておらず、現在行われている治療法は、その効果が時間の経過とともに低下することが多いといわれています7。
REGENERATE-PDについて
REGENERATE-PDは、中等度パーキンソン病の成人(45~75歳)を対象とした、被殻内AAV2-GDNF投与の有効性と安全性に関する第Ⅱ相無作為化二重盲検手術対照試験です。被験者には、画像ガイド下でAAV2-GDNFの両側被殻内単回投与(実薬治療群)または両側の部分的バーホール(burr hole)/ツイストホール(twist hole)形成(対照群) のいずれかを行います。本試験には、米国、英国、欧州の臨床試験実施施設で推定87 名の被験者が参加する予定です。REGENERATE-PD臨床試験の詳細については、clinicaltrials.gov(NCT06285643)、またはaskbio.comを参照ください。
AB-1005について
AB-1005は、ヒトグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV2)に基づく開発中の遺伝子治療用製品であり、MRI撮像下で対流強化薬剤送達法によって外科的に脳へ直接注入した後、脳の局所的な領域にGDNFを安定的かつ持続的に発現させることができます8,9。GDNFは、トランスフォーミング成長因子-βスーパーファミリーの遠縁のメンバーであるホモ二量体です。中脳神経細胞培養において、組み換えヒトGDNFはドーパミン作動性ニューロンの生存と形態学的分化を促進し、その高親和性ドーパミン取り込みを増加させました。GDNFは、中脳ドーパミン作動性ニューロンの進行性変性を特徴とするパーキンソン病などの疾患の治療用製品の候補として長期間にわたり評価されてきました10。
AskBio社について
Asklepios BioPharmaceutical(以下、AskBio社)社はドイツ・バイエル社の完全子会社で、独立経営の企業であり、生命を救う医薬品を開発し、人々の生活を変えることに特化した遺伝子治療企業です。AskBio社は、臨床試験段階のパイプラインとして神経筋疾患、中枢神経系疾患、心血管疾患、代謝性疾患を適応症とする幅広い臨床試験プログラムのポートフォリオを有しており、その中にはうっ血性心不全、ハンチントン病、肢帯状筋ジストロフィー、多系統萎縮症、パーキンソン病、ポンペ病の遺伝子治療製品が含まれています。AskBio社の遺伝子治療プラットフォームは、業界をリードする独自の細胞株産生プロセスであるPro10™や豊富なカプシドライブラリー、プロモーターライブラリーなどがあります。AskBio社は米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにグローバル本社、スコットランド・エディンバラに欧州本社を置き、数百もの独自のカプシドやプロモーターを創製し、そのうちのいくつかは前臨床試験や臨床試験に入っています。遺伝子治療分野における初期のイノベーターであり、5カ国に900人以上の従業員を擁し、アデノ随伴ウイルス(AAV)生産やキメラカプシドなどの分野で、800件以上の特許および特許出願を保有しています。詳細はwww.askbio.comをご参照、またはLinkedInでフォローしてください。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名(2023年)。特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
1. Parkinson’s Foundation. Who has Parkinson’s? Available at: https://www.parkinson.org/understanding-parkinsons/statistics. Accessed: May 2024.
2. Asklepios BioPharmaceutical, Inc. (January 2024). AskBio社 Phase Ib trial of AB-1005 gene therapy in patients with Parkinson’s disease meets primary endpoint [Press Release]. https://www.askbio.com/askbio-phase-ib-trial-of-ab-1005-gene-therapy-in-patients-with-parkinsons-disease-meets-primary-endpoint/
3. ClinicalTrials.gov. GDNF Gene Therapy for Multiple System Atrophy. Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04680065. Accessed: May 2024.
4. Michael J. Fox Foundation. Parkinson’s 101 – What is Parkinson’s disease? Available at: https://www.michaeljfox.org/parkinsons-101. Accessed: May 2024.
5. DeMaagd G, Philip A. Parkinson’s Disease and Its Management: Part 1: Disease Entity, Risk Factors, Pathophysiology, Clinical Presentation, and Diagnosis. P T. 2015 Aug;40(8):504-32. PMID: 26236139; PMCID: PMC4517533.
6. Parkinson’s Foundation. Motor-fluctuations. Available at: https://www.parkinson.org/library/fact-sheets/motor-fluctuations. Accessed: May 2024.
7. Mayo Clinic. Parkinson’s disease. Available at: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/parkinsons-disease/diagnosis-treatment/drc-20376062. Accessed: May 2024.
8. Heiss JD, Lungu C, Hammoud DA, Herscovitch P, Ehrlich DJ, Argersinger DP, Sinharay S, Scott G, Wu T, Federoff HJ,Zaghloul KA, Hallett M, Lonser RR, Bankiewicz KS. Trial of magnetic resonance-guided putaminal gene therapy for advanced Parkinson’s disease. Mov Disord. 2019 Jul;34(7):1073-1078.
9. Kells AP, Eberling J, Su X, Pivirotto P, Bringas J, Hadaczek P, Narrow WC, Bowers WJ, Federoff HJ, Forsayeth J, Bankiewicz KS. Regeneration of the MPTP-lesioned dopaminergic system after convection-enhanced delivery of AAV2-GDNF. J Neurosci. 2010 Jul 14;30(28):9567-77.
10. Lin LF, Doherty DH, Lile JD, Bektesh S, Collins F. GDNF: a glial cell line-derived neurotrophic factor for midbrain dopaminergic neurons. Science. 1993;260(5111):1130-1132.
バイエル薬品株式会社
2024年7月3日、大阪
AskBio社の将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
本ニュースリリースには、「将来予想に関する記述」が含まれています。本ニュースリリースに含まれる記述のうち、過去の事実に関する記述ではないものはすべて、将来予想に関する記述とみなされる可能性があります。「信じる」「予想する」「計画する」「期待する」「予定する」「意図する」「潜在的な」「可能性がある」およびその他の同様の語句は、将来予想に関する記述を識別できるようにすることを意図しています。これらの将来予想に関する記述とは、例えば、AskBio社の臨床試験に関する記述などですが、これらに限定されるものではありません。これらの将来予想に関する記述には、リスクおよび不確定要素が含まれており、その多くはAskBio社による制御が不可能なものです。既知のリスクとしては、例えば、期待または計画している臨床試験および規制上のマイルストーンおよびスケジュール、第三者に依拠する事項、臨床開発計画、製造工程および計画、新製品候補の上市などの事業計画や目標をAskBio社が実行できない可能性などがあります。これらのリスクは、会社の財務およびその他の資源の制限、予期しないまたは適切な時期に解決できない製造上の制約、第三者の共同開発企業やパートナー企業との意見の相違またはその他の問題、米国食品医薬品局および米国特許商標庁の見解および決定などを含む規制当局、裁判所または行政機関の見解または決定といったさまざまな理由によるものです。このようなリスクはいずれもAskBio社の事業および業績に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。本ニュースリリースに含まれる将来予想に関する記述については、全面的に依拠しないようお願いいたします。AskBio社は、本ニュースリリースの日付後に発生した事象または事態に基づき、将来予想に関する記述を公式に更新する義務は一切負わないものとします。AskBioの詳細については、www.askbio.comでご確認ください。