本資料は7月11日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。

パーキンソン病を対象にAskBio社が開発中のGDNF遺伝子治療用製品AB-1005が米国食品医薬品局のファストトラックおよび英国医薬品医療製品規制庁のイノベーションパスポートに指定

  • AB-1005は、中等度パーキンソン病患者を対象とした遺伝子治療用製品として研究
  • AskBio社は現在、米国で第II相REGENERATE-PD試験に被験者登録を実施
  • 英国と欧州の臨床試験実施施設は、2024年後半に開設予定

ドイツ・ベルリン、米国・ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、2024年7月11日 ― ドイツ・バイエル社とドイツ・バイエル社の完全子会社で独立経営の遺伝子治療企業であるAsklepios BioPharmaceutical社(以下、AskBio社)は、中等度パーキンソン病治療用製品として開発中のAB-1005について、米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定を受けたことを本日発表しました。またAB-1005はパーキンソン病治療用製品として、英国医薬品医療製品規制庁(UK MHRA)から革新的医薬品指定であるイノベーションパスポートが付与されています。

 

AB-1005は、中等度パーキンソン病に対して開発中であるアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)を用いたグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)遺伝子治療用製品です。本年初めにAskBio社はAB-1005の第Ib相試験において投与後18ヶ月の結果を発表し、両側被殻に直接単回投与した際の安全性を評価するという主要な目的を達成しました。

 

AskBio社パーキンソン病・多系統萎縮症サイエンティフィックチェアのクリストフ・バンキェヴィッチは、次のように述べています。「これらの指定は、依然として大きなアンメットニーズが存在するパーキンソン病患者さんのために革新的な治療法を開発することの重要性を明確にしています。さらに、主要な規制当局が患者さんにもたらす潜在的なベネフィットに焦点を当てて、AB-1005の開発を加速することを支援する姿勢を示しています」

 

FDAのファスト トラック プログラムは、重篤な疾患の治療やアンメットメディカルニーズを満たす新規治療薬の開発を促進し、その審査を迅速化するために作られました1。本プログラムの目的は、重要な新規治療薬をより早く患者さんに届けることです1。本指定を受けた治療薬は、開発計画についてFDAとより頻繁に検討を行い、関連する基準を満たした場合は、迅速承認や優先審査の対象となる可能性があります。

 

UK MHRAのイノベーションパスポートは、革新的ライセンスおよびアクセスパスウェイ(ILAP) の第一段階であり、上市までの時間を短縮し、患者さんの新薬へのアクセスを促進することを目指しています。この指定により、イノベーションパスポートの保持者は、UK MHRAおよびパートナーと協力して、新たな治療法のための製品固有のターゲット開発プロファイル (TDP) を作成する機会を得ることができます。TDP は、主要な規制および開発の特徴を定義し、潜在的な問題を特定し、専門家ツールキットへのアクセスを提供し、早期の患者アクセスを実現するためのロードマップを作成します2,3

 

AskBio社チーフ・ディベロップメント・オフィサーでチーフ・メディカル・オフィサーのキャンウェン・チアンは次のように述べています。「FDAのファストトラックとUK MHRAのイノベーションパスポートの指定は、AB-1005 の臨床開発にとって重要な成果であり、これらの指定を受けたことは、中等度パーキンソン病患者さんに対して安全な神経修復治療を提供するという私たちの目標を強調するものです。現在米国において被験者登録中で本年後半には欧州と英国の施設で開始する予定である、第 II 相臨床試験 REGENERATE-PD を進めることを楽しみにしています」

 

ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「これらの指定に関連する規制当局との頻繁な交流を活用して、AB-1005 の開発を加速できる可能性に非常に期待しています。AB-1005に付与されたこれらの指定は、パーキンソン病による深刻な障害を抱える人々のために、遺伝子治療のような新たな治療モダリティを進展させる必要性を強く示すものです」

 

AB-1005は、いずれの規制当局からも承認されていない開発中の遺伝子治療用製品であり、その有効性と安全性は確立されておらず、十分に評価されていません。

 

AskBio社は、パーキンソン病以外の疾患に対してもGDNF療法を探索しており、現在、米国で多系統萎縮症のパーキンソニズム型サブタイプ (MSA-P)の患者さんを第1相試験に登録し、急速に進行するこの疾患に対するGDNF療法の安全性、忍容性、有効性を予備的に評価しています4
 

パーキンソン病について
パーキンソン病は、脳内の神経細胞の損傷により、ドーパミン分泌量が低下することによって引き起こされる進行性の神経変性疾患です5。診断時点では、患者さんはすでにドーパミン作動性ニューロンの50~80%を失っていると推定されています6。これらのニューロンが失われると徐々に運動機能が低下し、振戦、筋固縮、動作緩慢などの症状が現れます7。パーキンソン財団によると、世界中で1,000万人以上がパーキンソン病に罹患しており、そのうち約100万人が米国でみられます8。根治療法は存在しておらず、現在行われている治療法は、その効果が時間の経過とともに低下することが多いといわれています9

 

REGENERATE-PDについて
REGENERATE-PDは、中等度パーキンソン病の成人(45~75歳)を対象とした、被殻内AAV2-GDNF投与の有効性と安全性に関する第Ⅱ相無作為化二重盲検手術対照試験です。被験者には、画像ガイド下でAAV2-GDNFの両側被殻内単回投与(実薬治療群)または両側の部分的バーホール(burr hole)/ツイストホール(twist hole)形成(対照群) のいずれかを行います。本試験には、米国、英国、欧州の臨床試験実施施設で推定87 名の被験者が参加する予定です。REGENERATE-PD臨床試験の詳細については、clinicaltrials.gov(NCT06285643)、またはwww.askbio.comを参照ください。

 

AB-1005について
AB-1005は、ヒトグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV2)に基づく開発中の遺伝子治療用製品であり、MRI撮像下で対流強化薬剤送達法によって外科的に脳へ直接注入した後、脳の局所的な領域にGDNFを安定的かつ持続的に発現させることができます10,11。GDNFは、トランスフォーミング成長因子-βスーパーファミリーの遠縁のメンバーであるホモ二量体です。中脳神経細胞培養において、組み換えヒトGDNFはドーパミン作動性ニューロンの生存と形態学的分化を促進し、その高親和性ドーパミン取り込みを増加させました。GDNFは、中脳ドーパミン作動性ニューロンの進行性変性を特徴とするパーキンソン病などの疾患の治療用製品の候補として長期間にわたり評価されてきました12

AskBio社について
Asklepios BioPharmaceutical(以下、AskBio社)社はドイツ・バイエル社の完全子会社で、独立経営の企業であり、生命を救う医薬品を開発し、人々の生活を変えることに特化した遺伝子治療企業です。AskBio社は、臨床試験段階のパイプラインとして神経筋疾患、中枢神経系疾患、心血管疾患、代謝性疾患を適応症とする幅広い臨床試験プログラムのポートフォリオを有しており、その中にはうっ血性心不全、ハンチントン病、肢帯状筋ジストロフィー、多系統萎縮症、パーキンソン病、ポンペ病の遺伝子治療製品が含まれています。AskBio社の遺伝子治療プラットフォームは、業界をリードする独自の細胞株産生プロセスであるPro10™や豊富なカプシドライブラリー、プロモーターライブラリーなどがあります。AskBio社は米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにグローバル本社、スコットランド・エディンバラに欧州本社を置き、数百もの独自のカプシドやプロモーターを創製し、そのうちのいくつかは前臨床試験や臨床試験に入っています。遺伝子治療分野における初期のイノベーターであり、5カ国に900人以上の従業員を擁し、アデノ随伴ウイルス(AAV)生産やキメラカプシドなどの分野で、800件以上の特許および特許出願を保有しています。詳細はwww.askbio.comをご参照、またはLinkedInでフォローしてください。

 

バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名(2023年)。特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

AskBio社について詳細はこちら  www.askbio.com
バイエル社について詳細はこちら  https://pharma.bayer.com/
バイエルのFacebookはこちら  http://www.facebook.com/bayer

1 US FDA – Fast Track. Available at: https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/fast-track Accessed: July 2024.

2 UK Government. Innovative Licensing and Access Pathway. Available at: https://www.gov.uk/guidance/innovative-licensing-and-access-pathway Accessed: July 2024

3 UK Government. First Innovation Passport awarded to help support development and access to cutting-edge medicines. Available at: https://www.gov.uk/government/news/first-innovation-passport-awarded-to-help-support-development-and-access-to-cutting-edge-medicines Last accessed: July 2024

4 ClinicalTrials.gov. GDNF Gene Therapy for Multiple System Atrophy. Available at: Study Details | GDNF Gene Therapy for Multiple System Atrophy | ClinicalTrials.gov. Accessed: July 2024.

5 Michael J. Fox Foundation. Parkinson’s 101 – What is Parkinson’s disease? Available at: https://www.michaeljfox.org/parkinsons-101. Accessed: July 2024.

6 DeMaagd G, Philip A. Parkinson’s Disease and Its Management: Part 1: Disease Entity, Risk Factors, Pathophysiology, Clinical Presentation, and Diagnosis. P T. 2015 Aug;40(8):504-32. PMID: 26236139; PMCID: PMC4517533.

7 Parkinson’s Foundation. Motor-fluctuations. Available at: https://www.parkinson.org/library/fact-sheets/motor-fluctuations. Accessed: July 2024.

8 Parkinson’s Foundation. Who has Parkinson’s? Available at: https://www.parkinson.org/understanding-parkinsons/statistics. Accessed: July 2024

9 Mayo Clinic. Parkinson’s disease. Available at: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/parkinsons-disease/diagnosis-treatment/drc-20376062. Accessed: July 2024

10 Heiss JD, Lungu C, Hammoud DA, Herscovitch P, Ehrlich DJ, Argersinger DP, Sinharay S, Scott G, Wu T, Federoff HJ, Zaghloul KA, Hallett M, Lonser RR, Bankiewicz KS. Trial of magnetic resonance-guided putaminal gene therapy for advanced Parkinson’s disease. Mov Disord. 2019 Jul;34(7):1073-1078.

11 Kells AP, Eberling J, Su X, Pivirotto P, Bringas J, Hadaczek P, Narrow WC, Bowers WJ, Federoff HJ, Forsayeth J, Bankiewicz KS. Regeneration of the MPTP-lesioned dopaminergic system after convection-enhanced delivery of AAV2-GDNF. J Neurosci. 2010 Jul 14;30(28):9567-77.

12 Lin LF, Doherty DH, Lile JD, Bektesh S, Collins F. GDNF: a glial cell line-derived neurotrophic factor for midbrain dopaminergic neurons. Science. 1993;260(5111):1130-1132
 

バイエル薬品株式会社
2024年7月17日、大阪
 

将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。