本資料は8月5日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
左室駆出率が軽度低下または保たれた心不全患者を対象に心血管アウトカムを検討した第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFでフィネレノンが主要評価項目を達成
- 標準治療へのフィネレノンの上乗せにより、心血管死およびすべての(初発および再発)心不全(HF)イベントからなる複合評価項目をプラセボと比べ有意に減少
- 左室駆出率(LVEF)が40%以上のHF(LVEFが軽度低下または保たれたHF)はHF患者の約半数にもかかわらず、承認され、かつガイドラインに基づく標準治療の選択肢は限られる
- 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬フィネレノンはLVEF 40%以上のHF患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験において心血管へのベネフィットを示した初めてのMR拮抗薬
- FINEARTS-HF試験の臨床データは2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表予定
- ドイツ・バイエル社は販売承認申請について規制当局とデータを協議予定
ドイツ・ベルリン、2024年8月5日 ― LVEFが40%以上の心不全患者を対象に、標準治療にフィネレノンを上乗せしたときのプラセボに対する有効性と安全性を検討した第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFが主要評価項目を達成しました。試験の結果、フィネレノン(ケレンディアⓇ)は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目において、統計学的に有意で、臨床的に意味のある減少を達成したことが示されました。FINEARTS-HF試験におけるフィネレノンの忍容性は良好であり、フィネレノンの既知の安全性プロファイルと一貫しています。
HFは、体内の需要に見合った十分な血液を送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することを特徴とする慢性疾患です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しています1。HF患者の約半数はLVEF 40%以上のHFです2,3,4。LVEF 40%以上のHFにはmultimorbidity(多疾患併存)が関連し、患者さんの50%は5つ以上の重大な併存疾患を有しているため、症状の管理は複雑になります。時間的傾向から、LVEF 40%以上のHF患者は今後さらに増加し、HFによる入院患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています5。
フィネレノンは、非ステロイド型選択的MR拮抗薬です。フィネレノンは、MRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることにより、心筋線維化などの進行がみられるLVEF 40%以上のHFの特徴に対応します。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門研究開発責任者のクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「FINEARTS-HF試験の良好な結果を大変うれしく思います。LVEFが軽度低下または保たれたHF患者に対して現在使用できる選択肢は限られており、今回のニュースは患者さんや臨床コミュニティにとって非常に重要です。バイエルは、2024年ESC学術集会でデータを共有することを楽しみにしており、一刻も早く適切な患者さんにフィネレノンをお届けしたいと考えています」
バイエル社は、販売承認申請について規制当局とデータを協議します。
【FINEARTS-HF試験について】
FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディアⓇ)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目でした。被験者約6,000人が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回、最長42カ月間投与されました。
FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中のMOONRAKER臨床試験プログラムは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い被験者および臨床設定のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。
【ケレンディアⓇ/FirialtaTM(フィネレノン)について】
ケレンディアⓇおよびFirialtaTMは、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MR拮抗薬であり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のある慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管障害に関与します。
フィネレノンは、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialtaTM)の名称で販売されています。2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90カ国以上で承認されています。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした10件の第Ⅲ相臨床試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験および第Ⅱ相臨床試験のCONFIDENCE試験で構成されています。
【HFについて】
HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています6,7。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています8,9,10。HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です11。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています12。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。
HFの危険因子には、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患などがあります。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します11。
LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられます:
- LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下です。
- LVEFが軽度低下したHF(HFmrHF)は、ほかの2つのカテゴリーの中間に位置するカテゴリーで、LVEFは41~49%です。
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上です。
LVEF 40%未満、LVEF 40%以上がそれぞれHF症例の約半数を占めますが、LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなります。時間的傾向からも、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています。LVEF 40%未満のHFでは治療が進歩していますが、LVEF 40%以上のHFでは治療の選択肢が限られています。
References:
1. Lippi G, Sanchis-Gomar F. AME Med J. 2020 Jun 25;5(15):1-6
2. Shahim B, et al. Card Fail Rev. 2023;27;9:e11
3. Redfield MM & Borlaug BA. JAMA. 2023;329:827–838
4. Gladden JD et al. Pflugers Arch. 2014;466(6):1037-1053
5. Oktay AA. Curr Heart Fail Rep. 2013;10(4):401-410
6. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
7. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
8. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
9. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024
10. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
11. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
12. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」をお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名(2023年)。特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2024年8月7日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
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