本資料は1月10日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。

ドイツ・バイエル社、アンメットメディカルニーズが高い左室駆出率40%以上の心不全患者に対するフィネレノンの新適応を米国食品医薬品局および中国医薬品評価センターに承認申請

  • フィネレノンは左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HF)患者(LVEFが軽度低下または保たれたHF患者)を対象とした第Ⅲ相臨床試験で心血管ベネフィットを示したミネラルコルチコイド受容体(MR)経路を標的とする初めての薬剤
  • 2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表され医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載された第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFのデータに基づく承認申請
  • 世界のLVEF 40%以上のHF患者数は約3,200万人で高い罹患率と死亡率を伴うものの承認され、かつガイドラインに基づく標準治療は限られる1,2,3,4

ドイツ・ベルリン、2025年1月10日 ― ドイツ・バイエル社は、LVEF 40%以上の成人HF患者(LVEFが軽度低下したHF[HFmrEF]、LVEFの保たれたHF[HFpEF])について、米国および中国でフィネレノンの承認を取得するため、米国食品医薬品局(FDA)および中国国家薬品監督管理局(NMPA)医薬品評価センター(CDE)に販売承認申請を行ったことを本日発表しました。

 

フィネレノンは、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で、第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFにおいて、LVEF 40%以上のHF患者を対象に心血管ベネフィットを示したMR経路を標的とする初めての薬剤です。フィネレノンは、ケレンディア(一部の国ではFirialta™)の名称ですでに販売されています。2型糖尿病を合併する成人慢性腎臓病(CKD)患者の治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90カ国以上で承認されています。

 

ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門リーダーシップチームメンバーで、エグゼクティブバイスプレジデント グローバル製品戦略&コマーシャリゼーション責任者のクリスティーン・ロスは次のように述べています。「HFは世界的に深刻な健康課題です。治療が困難なLVEF 40%以上の患者さんにとってはなおさらです。フィネレノンが承認されれば、この一般的なHFに対する治療の新たな柱となり、有効性が示された治療選択肢が現在限られている患者さんの心血管アウトカムを改善する可能性があります」

 

HFは世界中で6,000万人以上が罹患しており、急速に増加している公衆衛生上の問題です1。HF患者の約半数はLVEF 40%以上のHFです。LVEF 40%以上のHFは多疾患併存が関連し、症状の管理は複雑になります。疫学データの傾向より、LVEF 40%以上のHF患者が増加し、HFによる入院患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています5

 

フィネレノンはMRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることにより、血行動態因子や炎症・線維化プロセスなど、LVEF 40%以上のHFの主要な要因に対処します。第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFの結果、フィネレノンはLVEF 40%以上のHF患者を対象に、プラセボと比べ、心血管アウトカムに関して統計学的に有意な改善を示しました。

 

米国FDAおよび中国NMPA CDEへの承認申請は、FINEARTS-HF試験で得られたデータに基づいています。FINEARTS-HF試験は、合計15,000人以上の被験者を対象とするHFにおけるこれまでで最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムの一部です。同試験プログラムは、幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。

【FINEARTS-HF試験について】

FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディア)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目でした。

 

世界37カ国、630カ所以上の施設より約6,000人の被験者が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回投与されました。また、本試験の被験者は、症状および併存疾患の治療のために標準治療を受けました。

 

FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中のMOONRAKER臨床試験プログラムは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。

【ケレンディア/Firialta™(フィネレノン)について】

ケレンディアおよびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAであり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。

 

フィネレノンは、ケレンディア(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90カ国以上で承認されています。フィネレノンは心不全の治療に対して承認されていません。

 

フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験および第Ⅱ相臨床試験のCONFIDENCE試験で構成されています。

【HFについて】

HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を心臓に満たし、送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています6,7。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています8,9,10。HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です11。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています12。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。

 

HFの危険因子には、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患などがあります。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します 11

 

LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられます:

  • LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下*です。
  • LVEFが軽度低下したHF(HFmrEF)は、LVEFが41~49%*で、心臓のポンプ機能に何らかの障害がある患者さんのカテゴリーです。
  • LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上です。

LVEF 40%以下*、LVEF 40%以上がそれぞれHF症例の約半数を占めますが、LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなります。疫学データの傾向より、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています。LVEF 40%以下*のHFでは治療が進歩していますが、LVEF 40%以上のHFでは治療の選択肢が限られています。

 

* ESCのHF診療ガイドラインに基づく

References:
1. Shahim B, et al. Card Fail Rev. 2023;27(9):e11. doi: 10.15420/cfr.2023.05
2. Redfield MM, Borlaug BA. JAMA. 2023;329:827–838
3. Gladden JD, et al. Pflugers Arch. 2014;466(6):1037-1053
4. McDonagh TA, et al. Eur J Heart Fail. 2023;44(37):3267-3639. https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehad195 
5. Desai et al. Heart Failure Reviews (2024) 29:631–662 https://doi.org/10.1007/s10741-024-10385-y
6. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
7. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
8. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11. 
9. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024 
10. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250 
11. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
12. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042

循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて

バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2023年のグループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名、特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

バイエル薬品株式会社
2025年1月17日、大阪

将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)

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