2017年9月にバイエル薬品に入社し、現在バイエル薬品研究開発本部で細胞・遺伝子治療(CGT)イノベーションスクワッドリードとして働く加藤卓也さん。これまで国内外のさまざまなプロジェクトをリードし、複数の革新的医薬品の承認取得に貢献してきました。これらの培った経験を生かして、現在はイノベーションの次なる波であるCGT分野の臨床開発に取り組んでいます。加藤さんがリードする先端医療のプロジェクトにかける想いについて聞きました。

加藤 卓也さん

研究開発本部 イノベーションスクワッドCGTリード
加藤 卓也さん

―細胞・遺伝子治療(CGT)とはどのような分野なのでしょうか。

CGTは、現在のヘルスケア領域において最も急速に成長している分野の一つで、医療を根本的に変える可能性を秘めています。CGTは遺伝子や細胞レベルで疾患をターゲットにし、個々の疾患の予防、進行抑制、あるいは回復を可能にする革新的な治療オプションになりえます。バイエルは、CGTの広範なポートフォリオを有しており、早急に治療を必要とする患者さんに革新的な治療オプションを提供することを目指して日々製品の開発を進めています。

 

CGTのフォーカスエリアには、遺伝子治療、細胞治療、遺伝子編集などが含まれます。遺伝子治療は、患者さんの体内にある遺伝物質を病気の治療や予防に利用し、細胞治療は生きた細胞を移植することで病気の予防や治療を実現します。遺伝子編集は、遺伝物質をターゲットとして操作する技術であり、幅広い治療への応用が期待されています。

―日本の患者さんにCGT製品をより早く届けるために、CGTスクワッドチームではどのような取り組みをしていますか?

加藤卓也さんのお写真2

バイエルでは現在CGT関連の製品についてはAsklepios BioPharmaceutical(AskBio社)やBluerock therapeutics(BlueRock社)といったプラットフォーム企業と呼ばれるドイツ・バイエル社からは独立して運営される関連子会社が中心となって開発を進めています。特に、米国を中心としたグローバルな開発環境の中で、スクワッドチームでは日本での開発に向けた障壁を特定し、患者さんにより早く製品を届けられるよう、さまざまなことに取り組んでいます。

 

また、現在ドラッグラグ・ロスなどの議論の中でもたびたび触れられていることではありますが、バイエルのプラットフォーム企業を含めた海外のベンチャーの人たちには日本の薬事関連の法制度は理解が難しいとも言われています。そうした中で、日本での円滑な製品開発・上市に繋げるために海外のプロジェクトチームメンバーに日本の法制度や市場の特性について説明し、理解を深めてもらうことも私達の重要な取り組みの1つです。

―現代の医療においてCGTが果たす役割や解決が求められる課題について聞かせてください。

CGTは、従来の医薬品では治療が難しい疾患に対して新たな治療の可能性を提供し、医療のパラダイムを根本的に変える可能性を秘めています。社会からは大きな期待が寄せられており、CGTの進展が病気に苦しむ患者さんに新たな治療オプションをもたらすことが望まれています。これまでの医薬品の進歩も素晴らしいものでしたが、依然として治療法が存在しない疾患も多く、また治療が症状の緩和や疾患の進行抑制に留まってしまっているものも多くあります。その点、CGTは遺伝子や細胞レベルで疾患をターゲットにすることで、これまで十分な治療が難しかった疾患に対する新しい選択肢を提供できる可能性を秘めていることが最大の魅力です。また、理論通りに長期的な効果を発揮できれば、患者さんの治療負担の軽減や医療費の全体的な削減にも大きく寄与することが期待できます。

 

しかし、CGTには課題も存在します。具体的には大量生産や安定供給が難しいことと、その結果として医薬品の値段が高くなりがちなことです。

 

CGTの研究開発には困難を伴うことがありますが、日々診療に携わっておられる医師の先生方や監督官庁の担当者の方々と皆で知恵を出し合いながらプロジェクトを進めています。新しい治療を日本に導入するというのは大変ですが、とてもやりがいを感じることができます。

―CGTプロジェクトにおいて、どのような点でやりがいを感じていますか。

加藤卓也さんのお写真3
細胞・遺伝子治療(CGT)イノベーションスクワッドチームの会議風景

「一人ではとてもできないような大きなことをチームとして成し遂げる」ということが大きなやりがいになっていると感じます。日本だけでなくグローバルのメンバーやプラットフォーム企業のプロジェクトチームメンバーなど、さまざまなバックグラウンドの人たちと日々一緒に仕事をすることで一人では考えつかない考えをまとめることができたり、一人だったら解決不可能だと思えた問題をいつの間にか解決できたり、メンバー同士で助け合いながら進んでいけることが大きなやりがいになっています。

 

アフリカの諺で「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together(早く行きたいのなら一人で行きなさい。遠くまで行きたいならみんなで行きなさい)」というものがあるそうです。CGT製品について高みを目指すなら一人ではなく世界中の人たちで一丸となって進んでいくことが大切だと思いますし、そういう環境で日々仕事ができることが大きなやりがいに繋がっていると思います。

 

バイエルのミッション「Health for all, Hunger for none」の実現を目指すプロジェクトチームの情熱とリーダーシップが、バイエルのCGTプロジェクトの成功に向けて大きな原動力となっています。

*取材した社員の所属・役職の表記は取材当時のものです。

 

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