循環器・腎・代謝疾患にフォーカスした取り組み

慢性腎臓病（CKD）とは、腎臓の働きが低下するか、タンパク尿が出るといった腎臓の異常が３カ月以上続く状態です。日本には約1,480万人のCKD患者さんがいると推計されています^1,2。CKDは進行すると死に至る危険がありますが、あまり認識されていません。CKDは、糖尿病に起因する最も多い合併症の1つであり、心血管疾患の独立した危険因子でもあります。2型糖尿病患者さんの最大40%がCKDを発症します。ガイドラインに基づく治療にもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者さんは、CKDの進行および心血管イベント発現のリスクが依然として高いままです。2型糖尿病を合併するCKDは、生存のために透析または腎移植を必要とする末期腎不全の主な原因です。2型糖尿病を合併するCKD患者は、2型糖尿病のみの患者さんよりも心血管系疾患で亡くなる可能性が3倍高くなります³。

心臓または血管に生じる病気を心血管疾患といいます。一般的に心臓、心臓弁または冠動脈（心臓に血液を供給する血管）に起こる心疾患と腕、脚、体幹などの血管（冠動脈を除く）に起こる末梢血管疾患に分けられます。心疾患には心房細動などの不整脈や狭心症や心筋梗塞、弁膜症などさまざまなものがあり、日本では、300万人を超える心疾患患者さんがいると推計され、日本人の死因の第2位となっています⁴。また高齢者や糖尿病患者さんなどでは、狭心症や心筋梗塞が発症しても痛みを感じない場合もあり、原因不明の不整脈や倦怠感を訴える場合もあります。これらの疾患は、再発・増悪を繰り返しながら、徐々に悪化していくため、生活習慣の改善や薬物療法の継続などによる再発・重症化予防が重要です。

心不全は非常によくみられる慢性疾患で、全世界中で6,000 万人以上の人々が罹患しており、65歳以上の入院の主な要因となっています^5,6。高齢化の影響もあり、心不全の患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています^7,8,9。心不全は体内で必要とする血液と酸素を供給するための心臓のポンプ機能の低下が進行していくことを特徴としており、その症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫（下肢の腫れ）、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。また、心不全には複数の併存疾患が組み合わさることがあり、心不全患者さんの半数以上が肥満、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています¹⁰。心不全と診断された人の約30％が1年以内に亡くなり、5年後には約40％に増加します¹¹。治療や予防への取り組みが進歩しているにもかかわらず、心不全は一般的ながんと同様に予後不良のままです¹¹。