DNAは地球上に存在する生物にとって設計図のようなものであり、DNAでコード化された生物の形質は細胞から細胞へ、世代から世代へと受け継がれていきます。これは多くの場合、何の問題もなく行われますが、受け継がれていく過程でエラーが起こり、DNAの塩基配列に変化が生じることがあります。それによる影響や害がない場合もありますが、何千もの希少な単一遺伝子疾患や時に生命を脅かす疾患の1つが引き起こされる可能性もあります。

Gene Editing Factsheet

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Factsheetサマリー

遺伝性疾患はどのように発症し、どう対処すべきなのか?

遺伝子を構成するDNAは、生命の取扱説明書のような働きをしています。DNAは通常、かなり正確に複製されますが、複製エラーが起こりDNA配列に変化が生じることもあります。

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DNA配列の変化は遺伝的あるいは後天的に生じ、無害の場合もありますが、細胞機能を変化させ、時に生命を脅かす希少な遺伝性疾患の根本的な原因となることもあります。このように、変異した遺伝子に起因する疾患が、新たに発見された遺伝子編集のターゲットとなります。遺伝子編集によって特定の疾患の原因となる欠陥遺伝子を修正することで、症状の改善や疾患の発症予防が期待できます。

遺伝子編集:生物医学における "スイス・アーミーナイフ“

遺伝子編集とは、遺伝物質を標的として操作する技術です。スイス・アーミーナイフとも言われるこの技術は、細胞へ機能的な遺伝子を挿入したりゲノム変異を修正したりするなど、様々なDNA編集の方法によって幅広い治療への応用を可能にします。

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遺伝子編集はどのように行われるのか?

遺伝子編集には、生体内(in vivo)での遺伝子治療や生体外(ex vivo)での遺伝子治療など、いくつかの形態がある:

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生命の設計図を書き換える

疾患の根本的な遺伝要因を理解することで、遺伝子編集と疾患を適切に組み合わせることができます。がん、血液疾患、感染症、希少な遺伝性疾患に対して、遺伝子編集を用いた治療法の開発研究が進められています。その一例がCRISPRであり、糖尿病、鎌状赤血球、その他多くの疾患の治療法として臨床試験が行われています。また、遺伝子編集は細胞治療を可能にする技術としても有用です。

 

2020年にEmmanuelle Charpentier氏とJennifer A. Doudna氏がゲノム編集の新たな手法の開発でノーベル化学賞を受賞しています。彼らはCRISPR/Cas9と呼ばれる技術を使って動植物や微生物のDNAを極めて高い精度で変化させる方法を発見しました。このCRISPR/Cas9は、「遺伝子のハサミ」とも称されています1

遺伝子編集の発展に向けたバイエルのコミットメント

バイエルは、Mammoth Biosciences社の画期的な遺伝子編集技術によって遺伝子編集と治療研究における社内の専門性を高め、患者さんにより良い治療法を提供するための技術開発に取り組んでいます。バイエルは、今、可能だと考えられていることを超えて、新たなアプローチの探求に尽力するため技術革新に投資しています。

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1. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2020. NobelPrize.org. Nobel Prize Outreach AB 2022. Tue. 13 Sep 2022.
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2020/press-release/

遺伝子編集は、ノーベル化学賞に選ばれたCRISPRのような技術によって遺伝物質を標的として操作し、疾患を引き起こすDNAの塩基配列の変化を修正することが可能になりました。遺伝子編集は細胞・遺伝子治療の領域の中で最も歴史が浅いものの1つですが、その技術は急速な進歩を遂げています。

サイエンスとテクノロジー

ヘルスケア領域において、遺伝子編集の技術は、治療効果を得るために遺伝物質を正確に操作することを可能にしました。具体的には、疾患の原因となる遺伝子の突然変異の修正、DNAの特定部位への治療用遺伝子の付加、有害な遺伝子配列の除去などが含まれます。こうした多様性から、遺伝子編集の技術はまるでスイス・アーミーナイフ(万能ナイフ)のように、様々な機能を備えた非常に貴重なツールであると考えられます。また、遺伝子編集は細胞治療を可能にする技術として使用されるほか、単独の遺伝子治療としても高いポテンシャルを秘めています。

 

細胞治療を可能にする技術として、遺伝子編集は治療用細胞の改変や改良を行うことは、効力や持続性の向上、免疫原性の低減など、安全性や有効性が向上した次世代の細胞治療の開発につながります。これによって、より多くの患者さんや広範な適応症に細胞治療を導入することが可能となります。一方、治療的な遺伝子編集は登場して間もない遺伝子治療であり、がん、血液疾患、感染症、希少な遺伝性疾患に対する治療法としての開発・研究が進められています。治療的な遺伝子編集の一例としてはCRISPRが挙げられ、現在、糖尿病、鎌状赤血球、その他多くの疾患で臨床試験が実施されています。

 

DNAを比類のない精度で操作できる遺伝子編集は、疾患の治療として最も汎用性の高いアプローチの1つであり、ヘルスケア領域にパラダイムシフトをもたらす可能性があります。

バイエルの戦略

遺伝子編集は、バイエルの細胞・遺伝子治療(CGT)戦略が将来的に成功を収める上で不可欠なプラットフォームとなっています。そのため、バイエルは遺伝子編集をリードするMammoth Biosciences社やReCode Therapeutics社などのバイオテクノロジー企業とのコラボレーションを通じて、また社内においても重要な専門知識を蓄積することにより、この分野におけるイノベーションを推進しています。バイエルは、アンメット・メディカル・ニーズの高い遺伝性疾患に対し、遺伝子編集による治療の可能性を追求することに全力を注いでいます。また、次世代の細胞治療を実現するための技術としても、遺伝子編集を活用しています。治療用細胞に遺伝子編集を用いることで、細胞治療の効力や持続性を高めたり、免疫原性を低減させたり、細胞に安全保護機構を組み込んだりすることができることから、難治性疾患に苦しむ患者さんにとって遺伝子編集はより強力なツールとなることが期待されます。

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