遺伝子は人体の設計図です。遺伝子は、細胞機能に重要なタンパク質を作るための指示を体内の細胞に出しています。多くの疾患は、遺伝子の欠陥や欠損によるタンパク質の発現異常によって引き起こされます。

Gene Therapy Factsheet

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Factsheetサマリー

遺伝子は人体の設計図

遺伝子は、細胞が正しく機能するために必要な生命の構成要素を作る方法を指示します。私たちの遺伝子はDNAからできており、DNAはA(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン)、T(チミン)と呼ばれる4つの塩基から構成されます。つまり、遺伝子は4つの文字で書かれた書物に例えることができます。これらの塩基(文字)が正しく配列することで、遺伝子はタンパク質を合成するための指示書となるのです。遺伝子治療は遺伝子に書かれた体内の言語を使って、必要とする場所で治療を開始するための特定の指示を細胞に出します。

遺伝子治療とは?

遺伝子治療は遺伝物質を用いて遺伝性・後天性の疾患を治療する方法で、患者さんの細胞内に遺伝物質を導入し、除去あるいは変化させます(下図参照)。
遺伝子治療を成功に導く上で必要となるのは、最適化されたベクター、プロモーター、疾患特異的な導入遺伝子からなる3つの主要コンポーネントです。

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約5,600もの希少な遺伝疾患があり1、そのうちの95%には治療法がないという現状2をご存知ですか?

遺伝子治療を必要とする患者のために

健康は様々な知識を得て理解を深めることから始まるものですが、ここ数十年の科学の進歩によって人体に関する多くの知見が得られています。特に遺伝学の進歩は、医師と患者さんに、重篤な衰弱性の疾患に対する有望な治療オプションをもたらしました。

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眼疾患、脊髄性筋萎縮症、血液疾患であるβサラセミアなど様々な疾患に対し、すでにいくつかの遺伝子治療が承認されていること3をご存知ですか?

1. Ehrhart F. et al., Scientific Data 8, 124 (2021).
2. Editorial: Spotlight on rare diseases, The Lancet Diabetes & Endocrinology 2019; 7(2): 75
3. Gene, Cell, & RNA Therapy Landscape, Q2 2022 Quarterly Data Report, ASCGT

遺伝子治療は、長い間、希望的観測に過ぎなかったことを実現しうるものであり、遺伝物質を用いることによって、遺伝性・後天性の疾患を根本原因から治療します。また、遺伝子治療は欠陥や欠損のある遺伝子の除去・変更、あるいは特定の細胞に遺伝物質を導入することなどによって、現在は治療法が限られているか不十分な治療しか提供できない、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域に貢献できる可能性があります。そのため、遺伝子治療は医療にパラダイムシフトをもたらすと考えられます。

サイエンスとテクノロジー

遺伝子治療では、遺伝物質を導入するために、欠陥や欠損のある遺伝子の機能的コピーを細胞に追加することで、体内で目的のタンパク質(酵素、血液凝固因子など)の産生が促進されます。そして、治療用遺伝子は細胞が正しく機能するのを助け、機能的なタンパク質を回復させます。なお、遺伝子治療における遺伝物質は体内の一部の細胞(例えば肝細胞など)にのみ導入されます。

 

遺伝子治療を成功させ、遺伝物質を標的まで安全に送達するため、遺伝子治療薬にはベクター、導入遺伝子、プロモーターを含む3つのコンポーネントが必要です。低分子化合物と異なり、遺伝子は無防備な状態で血流に入ると消失または分解されるため、経口や注射により投与することができず、その代わりにベクターを必要とします。ベクターは標的細胞に遺伝子を運ぶシャトルのようなものであり、現在、FDAに承認された遺伝子治療において使用されている最も一般的なベクターは改変されたウイルスです。逆説的に感じるかもしれませんが、遺伝物質を特定の細胞に送り届けるエキスパートであるウイルスはベクターとして最適です。ベクターとして使用する前にウイルスのDNAは除去され、カプシドと呼ばれる殻は正常な遺伝物質のコピーで満たされます。そのため、こうしたウイルスは疾患を引き起こさず、遺伝子治療のベクターとしての役割を果たします。また、ウイルスベクター以外にも、脂質ナノ粒子など遺伝子を送達する他のベクターの研究が進められています。

 

遺伝子治療の他の2つのコンポーネントのうち、導入遺伝子は細胞に治療反応をもたらすためのすべての遺伝情報を保持しています。ベクターに搭載された導入遺伝子は標的細胞に移動し、そこで正しい指示を伝えます。
一方、プロモーターは標的細胞で導入遺伝子を発現させるために必要なコンポーネントです。プロモーターは基本的に治療用の導入遺伝子の前に位置するDNAの一部で、スイッチのように作動するよう設計されており、選択された組織において導入遺伝子の活性を制御します。

 

ウイルスであるかどうかに関わらず、導入遺伝子をベクターに載せることで、体内への投与の準備が整います。体内でベクターが標的細胞に遺伝子を運びこむことで、その細胞は本来の機能を発揮するようになるため、1回の遺伝子治療であっても疾患の進行を長期に抑制したり、根治をもたらす可能性があります。

バイエルの戦略

2020年、バイエルは遺伝子治療のパイオニアで遺伝子治療技術に関連する750以上の特許を保有するAsklepios BioPharmaceutical, Inc.(AskBio社)を買収しました。AskBio社はアデノ随伴ウイルス(AAV)の使用を専門としていますが、同社の科学者たちは現在、心血管疾患(うっ血性心不全)、代謝性疾患(ポンペ病)、神経変性疾患(パーキンソン病、多系統萎縮症)などの重篤な消耗性の疾患に苦しむ患者さんを救うことを目的として、複数の治療法の開発に取り組んでいます。さらにバイエルは、遺伝子治療プラットフォームの将来的な臨床適応の拡大に向けて、他の遺伝子治療のリーディング企業とのコラボレーションを進めています。

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