本資料は5月23日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はhttps://media.bayer.comをご参照ください。
左室肥大の既往の有無にかかわらず2型糖尿病を合併する慢性腎臓病におけるケレンディア®の腎臓および心血管に対する有用性を支持する新データ
- FIDELITYの探索的事後解析から得られたデータはケレンディア®(フィネレノン)が心不全による入院を抑制する可能性を示し、ベースライン時点で左室肥大がある集団では効果がより顕著
- 2型糖尿病やその他の心血管疾患を合併するステージ1-4のCKD患者を含む幅広い集団における腎・心血管系アウトカムに対するフィネレノンの有用性を示し、臨床エビデンスを追加
- FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験の事前規定された統合解析FIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上を対象とする最大規模の心腎アウトカム第Ⅲ相臨床試験プログラム
ドイツ・ベルリン、2022年5月23日 ― 第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの事前規定された統合解析FIDELITYの探索的事後解析で得られた最新データより、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬ケレンディア®(フィネレノン)の腎臓および心血管に対する有用性が補強されました。本解析の結果、ベースライン時点に心電図で左室肥大と診断されたかどうかにかかわらず、2型糖尿病を合併する幅広い重症度のCKD患者にケレンディア®を標準治療に上乗せして使用した場合、プラセボと比べ、心血管および腎の複合エンドポイントの発現リスクを一貫して低下することが示されました。心血管複合エンドポイントの構成要素である心不全による入院の相対リスクは、左室肥大がある集団と、ない集団の両方で低下し、左室肥大がある集団ではより顕著な効果が認められました。この探索的事後解析の結果は本日、ESC2022年心不全学術集会で発表されました。
ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学循環器内科教授で、第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの共同治験責任医師であるガラシモス・フィリパトス氏は次のように述べています。「CKDや2型糖尿病、高血圧症の患者さんは、CKDでない患者さんと比べ、左室肥大の有病率が高いことが示されています。困ったことに、これらの疾患を併発していると、心血管イベントのリスクがより高くなります。既存の臨床エビデンスに基づき、この新しいデータは左室肥大やCKD、2型糖尿病を有する特に脆弱な患者さんにおいて、フィネレノンがアウトカムを改善する可能性を示しています。また、左室肥大がある集団と、ない集団の両サブグループにおいて、心不全による入院の相対リスクを低下する可能性も明らかになりました」
左室肥大は、心血管疾患とそれに伴う罹患率および死亡率の予測因子です。解析対象となった2型糖尿病を合併するCKD患者13,026人のうち、1,250人がベースライン時点で左室肥大を有していました。左室肥大がある集団と、ない集団との間で、人口統計学的特性とベースライン特性は均衡が取れていましたが、左室肥大がある集団は、ない集団より尿中アルブミン/クレアチニン比が高値でした。ベースライン時点で左室肥大がある集団では、冠動脈疾患、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患の既往がある割合が高くなっていました。左室肥大がある集団では、β遮断薬と抗血小板剤の併用がより高頻度にみられました。
フィネレノン群は左室肥大の有無にかかわらず、心血管複合エンドポイントの相対リスクを一貫して低下させました(左室肥大あり28% vs 左室肥大なし11%、交互作用のp値 0.11)。腎複合エンドポイントの相対リスクの低下も、サブグループ間で一貫していました(左室肥大あり44% vs 左室肥大なし20% 、交互作用の p 値 0.18)。心血管複合エンドポイントの構成要素である心不全による入院の相対リスクは、両サブグループで低下し(左室肥大あり66% vs 左室肥大なし14%)、フィネレノン群の効果は左室肥大がある集団で有意に大きくなりました(交互作用のp値 0.0024)。全体的にみて、安全性はサブグループ間で同様であり、有害事象の重症度は大部分が軽度から中等度でした。高カリウム血症の発現率は、左室肥大の有無にかかわらずプラセボ群よりフィネレノン群で高くなりましたが、高カリウム血症による投与中止は両群とも低率でした。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、複雑なリスクプロファイルを有していることが多いのが特徴です。今回の探索的解析により、2型糖尿病を合併するCKD患者さんの中でも特に脆弱なサブグループにおいて、フィネレノンの心血管および腎臓に対する有用性が強調されており、患者さんを入院させることなく、心臓と腎臓を守るこの治療薬の可能性が示されています」
第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDの結果に基づき、ケレンディア®は2022年2月に欧州連合で販売承認され、2021年7月には米国食品医薬品局(FDA)より承認されました。ケレンディア®はまた、第Ⅲ相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの結果に基づいて、2022年3月に日本の厚生労働省より承認されました。フィネレノンは世界の複数国で製造販売承認申請が行われており、現在審査中です。
ケレンディア®(フィネレノン)について
ケレンディア®は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与します。
フィネレノンを用いた第Ⅲ相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF、FIND-CKD、FIONAという5つの第Ⅲ相臨床試験と、第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEで構成されています。
2型糖尿病を合併するCKDを対象としたフィネレノンの第Ⅲ相臨床試験プログラムには、世界中の2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上が無作為割り付けされており、完了して結果発表された2試験で構成されています。2試験では、腎臓および心血管系の両アウトカムに関し、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの効果が検討されました。FIDELIO-DKD(FInerenone in reducing kiDnEy faiLure and dIsease prOgression in Diabetic Kidney Disease)試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者約5,700人を対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制に関して、標準治療に上乗せしたときのフィネレノンの有効性と安全性をプラセボと比較検討しました。FIGARO-DKD(FInerenone in reducinG cArdiovascular moRtality and mOrbidity in Diabetic Kidney Disease)試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者約7,400人を対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関して、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの有効性と安全性を検討しました。
FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験を含むFIDELITY(FInerenone in chronic kiDney diseasE and type 2 diabetes:Combined FIDELIO-DKD and FIGARO-DKD Trial programme analYsis)は、2型糖尿病を合併するCKD患者13,000人以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムです。事前規定された統合解析FIDELITYは、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、CKDの進行および致死的・非致死的な心血管イベントのリスク低減に関するフィネレノンの有効性と安全性を検討し、CKDステージ(ベースライン時点のKDIGO[Kidney Disease: Improving Global Outcomes]のリスク分類に基づく)と心血管系と腎特有の複合評価項目に対するフィネレノンの効果との関係について知見を示しました。
バイエルは2021年11月に、高度タンパク尿の増加を伴う小児CKD患者約200名を対象に、標準治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性、および薬物動態/薬力学(PK/PD)を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験FIONAの開始を発表しました。
2021年9月には、高血圧症や慢性糸球体腎炎(腎臓の炎症)などの非糖尿病性CKD患者1,500人以上を対象に、CKDの進行に関して、ガイドラインで推奨されている治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ臨床試験FIND-CKDの開始を発表しました。
バイエルはまた、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第Ⅲ相床試験FINEARTS-HFの開始を2020年6月に発表しました。本試験は、左室駆出率が維持されている、つまり左室駆出率40%以上の症候性心不全(HF)患者(NYHA心機能分類Ⅱ-Ⅳ度)5,500人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較検討します。本試験の主要目的は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院またはHFによる緊急受診と定義)の複合評価項目の発現率減少に関して、プラセボに対するフィネレノンの優越性を検証することです。
バイエルは2022年2月に、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、フィネレノンとSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、フィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比較検討する3群比較の第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEの開始を発表しました。本試験の主要目的は、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の低下に関し、フィネレノンとエンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、エンパグリフロジン単剤療法またはフィネレノン単剤療法に対する優越性を検証することです。
2型糖尿病を合併するCKDについて
CKDは一般的な疾患であり、死に至る可能性がありますが、広く認知されていません。CKDは静かに、予測不可能に進行し、多くの症状は疾患がかなり進行するまで現れません。CKDは、糖尿病に起因する最も多い合併症の1つであり、心血管疾患の独立した危険因子でもあります。2型糖尿病患者の最大40%がCKDを発症します。ガイドラインに基づく治療にもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者は、CKDの進行および心血管イベント発現のリスクが依然として高いままです。CKDは、世界中で1億6,000万人以上の2型糖尿病患者に影響を及ぼしていると推定されています。2型糖尿病を合併するCKDは、生存のために透析または腎移植を必要とする末期腎不全の主な原因です。2型糖尿病を合併するCKD患者は、2型糖尿病のみの患者さんよりも心血管系疾患で亡くなる可能性が3倍高くなります。
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」をお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメット・メディカル・ニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2022年5月31日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。