DNAについて
私たちの存在は、数えきれないほどの物質から成り立っていますが、一人一人異なる私たちの遺伝情報にはその多くの設計図が含まれています。実際、DNAは生命のさまざまな側面を維持するために、体内の個々の細胞にどこで何をすべきか指示しています。ですから細胞内の詳細な遺伝情報を理解することで、健康を管理するための新たな方法を発見できる可能性があるのです。
遺伝子に基づくがん治療
栄養や環境などの要因とともに、DNAは体内のあらゆる細胞の成長や発達、機能を決定しています1。細胞にはそれぞれ特定の役割がありますが、すべての細胞が協力して健康な体に保っています。そのために、これらの何兆個もの細胞は、一生を通じて毎日少しずつ新しいものへと入れ替わり、その回数は数えきれません。しかし、このプロセスに影響を及ぼす変異と呼ばれる小さな変化がDNAに生じることがあり、健康に重大な問題を引き起こすことがあります。がんもその1つです2。
~37.2兆個
の細胞が私たちの体を形作るとともに、生命を維持するための重要な機能を果たすことで、一人一人異なる私たちの存在が成り立っています。
細胞で起きる変化についてより深く理解することで、発生したがんをより効果的に標的とした治療が可能となり、さらには発生する前のがんを標的とした治療も可能となるかもしれません。これがプレシジョン・オンコロジー(がん領域の精密医療)*の基礎となる考えであり、プレシジョン・オンコロジーでは高度な遺伝子検査を用いて、がん性腫瘍を引き起こす可能性があるDNA変異を特定します3-5。がんの原因となるこのような細胞の変化を理解することにより、個人にあった適切な治療法が選択できるようになります。すなわち、私たちが一人一人異なるように、医療も一人一人異なり、より良い、より正確な治療が可能となるのです。
参考資料
1 Alberts B, Johnson A, Lewis J, et al. Molecular Biology of the Cell. 4th edition. New York: Garland Science; 2002. Extracellular Control of Cell Division, Cell Growth, and Apoptosis.
2 Signal Transduct Target Ther. 2021 Jul 9;6(1):254.
3 American Society of Clinical Oncology Educational Book 37 (October 29, 2018) 160-169.
4 Joaquin Mateo, et al. Nat Med. 2022 Apr;28(4):658-665.
5 Ritika Dutta, et al. Nat Cancer. 2023 Jun;4(6):787-794.
*分子生物学的に腫瘍をプロファイリングすることにより、治療の標的となりえる遺伝子変化を同定し、がん治療の選択の意思決定につなげること。
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