バイエル薬品、異なる治療法を受けた日本人月経困難症患者を対象とした月経随伴症状、健康関連QOL、労働生産性に関する観察研究結果を発表

  • 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)治療が月経随伴症状(身体的・精神的症状)、健康関連QOL(精神的、社会機能的)および労働生産性(プレゼンティーズム、全労働への障害率、活動性障害)などのスコアと関連
  • 月経随伴症状や健康関連QOL改善は、労働生産性と相関していることが示唆

 

大阪、2022年5月10日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:フリオ・トリアナ、以下「バイエル薬品」)は、異なる治療法を受けた日本人月経困難症患者を対象とした月経随伴症状、健康関連QOL、労働生産性に関する観察研究結果が、2022年4月1日に科学雑誌Advances in Therapyのオンライン版に掲載されたことをお知らせします。

 

月経困難症は生殖年代の女性に最も多くみられる疾患であり、その症状は多岐にわたり、下腹部痛、頭痛、吐き気、不眠、疲労、不安、抑うつ、脱力感、下痢などがあり、女性の心身に大きな影響を及ぼします。日本では年間約90万人の月経困難症の女性が医療機関を受診しているといわれています1)が、欧米諸国の女性よりも適切に婦人科を受診して治療を受けている女性が少ないことが懸念されています。このような日本の現状は、女性自身のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が低下することのみならず、労働生産性の低下に伴う経済的損失にもつながり社会的な問題となっています。日本の診療ガイドラインで月経困難症治療剤として推奨されている低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP: Low dose estrogen-progestin)では、健康関連QOL2)と労働生産性の関係を調査する研究データは不足しており、本研究ではそれらを実臨床で調査することを目的として実施しました。

 

本研究は日本において原発性・続発性月経困難症患者397名を対象とした前向き非介入/観察研究です。LEP治療群(n=251)または非LEP(非ステロイド性抗炎症剤または漢方薬)治療群(n=146)において、治療前(登録時:ベースライン)・経過観察時(投与60日後)・最終経過観察時(投与120日後)における月経随伴症状、健康関連QOL、労働生産性について調査し、各群間の違いについて確認するために回帰分析を行いました。

 

月経随伴症状の経時的変化をみたところ、月経前および月経期間中においてLEP治療では、120日観察期間で月経周期にみられるさまざまな心身の変化や不調の程度について評価する質問票(mMDQ:スコアが高い程、症状が重い)の6領域(①痛み ②集中力 ③行動変化 ④自律神経反応 ⑤水分貯留 ⑥負の感情)においてベースライン値からのmMDQスコアの減少が認められました。一方、非LEP治療では120日間の観察期間を通じてmMDQスコアの統計的有意差のある変化は認められませんでした。

 

健康関連QOLを測定する質問票(SF-36v2.0:スコアが高い程QOL良好)をみたところ、120日観察期間においてLEP治療では精神的側面のQOLサマリースコア(MCS:Mental Component Summary)およびそのすべてのサブスケールスコア(活力、社会機能、精神的日常役割機能、心の健康)でベースライン値からのスコアの上昇が認められました。一方、身体的側面のQOLサマリースコア(PCS: Physical Component Summary)に関して統計的有意差のある変化は認められませんでしたが、そのいくつかのサブスケールスコア(体の痛み、社会生活機能)においてはベースライン値からのスコアの上昇が認められました。一方、非LEP治療では観察開始120日目において両身体的・精神的側面のQOLサマリースコアに関して統計的有意差のある変化は認められませんでした。

 

労働生産性を評価するための質問票(mWPAI:障害度および能率低下度をパーセント(%)で算出)をみたところ、LEP治療では120日観察期間において、プレゼンティーイズム3)、全労働への障害率、活動性障害についてベースライン値からの減少が認められました。一方、非LEP治療では、活動性障害のみでベースライン値からの減少が認められました。

 

さらにサブグループ解析では月経随伴症状、健康関連QOLのスコアと労働生産性の相関性が示されました。またLEP治療において投与方法別(28日周期投与/連続投与)にみたところ、連続投与では特にmWPAI労働生産性スコア(アブセンティーズム4))において60日観察期間までにベースライン値と比較してスコアの減少が認められました。一方で28日周期投与においては同項目におけるベースラインと比較した統計的有意差のある変化は認められませんでした。これらの結果により日本人女性において、月経困難症は健康関連QOLおよび労働生産性のスコアと関連していることがわかりました。実臨床において月経困難症状の身体的・精神的側面の改善によるQOL、労働生産性への影響が期待できます。

 

筆頭著者である 山梨大学医学部産婦人科学 准教授 吉野 修 先生は、次のように述べています。「月経困難症は月経痛のみならず、生活の質(QOL)や労働生産性を低下させることがわかっています。今回の研究で、LEP製剤と労働生産性に関する新たなエビデンスが得られたことは、月経困難症の治療法の選択や意思決定をする際に有益な情報データとなる可能性があります。日本でも2017年より使用可能となったLEP治療の連続投与方法について労働生産性との関連に関する新たな知見となりました。欧米と比較して婦人科受診率が低い日本において今回のデータを広く伝えることで、多くの女性に適切な治療を受けていただく一助となることを願っています」

 

本研究に関する詳細については、下記の 科学雑誌Advances in Therapyオンライン版よりご覧いただけます。効能・効果の詳細は各LEP製剤添付文書をご参照ください。
Menstrual Symptoms, Health-Related Quality of Life, and Work Productivity in Japanese Women with Dysmenorrhea Receiving Different Treatments: Prospective Observational Study
(https://link.springer.com/article/10.1007/s12325-022-02118-0)

(本研究ならびに論文執筆・出版に関連する費用はバイエル薬品株式会社によって負担されました。その他著者等によって開示すべき利益相反はありません。)

 

1)産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017:日本産婦人科学会、日本産科婦人科医会
2)健康関連QOL (Health-related Quality of Life; HR-QoL): 健康が日常生活機能に与える影響や、本人が感じる健康度を定量化したもの
3)プレゼンティーイズム(presenteeism):健康問題が理由で生産性が低下している状態
4)アブセンティーズム(absenteeism):健康問題による欠勤

MDQ (Menstrual Distress Questionnaire)

月経の周期にみられるさまざまな心身の変化や不調について評価する質問用紙で,本調査では質問用紙を一部改変した修正版(mMDQ)を用いています。英語版MDQの版著作権はMoos, Rudolph H氏が所持している。日本語版MDQは秋山昭代氏・茅島江子氏により作成されました。

Moos, RH. The development of a menstrual distress questionnaire Psychosom Med 1968;30 (6):853-67.
堀 洋道 監修/ 松井 豊 編 心理測定尺度集III -心の健康をはかる<適応・臨床> - 「5 看護と心理」 P 272, 「月経随伴症状日本語版 (MDQ; Menstrual Distress Questionnaire)」(秋山・茅島、1979)

 

SF-36 (MOS 36-Item Short-Form Health Survey)

健康関連QOLを測定するための科学的信頼性・妥当性に関する尺度。健康に関する共通の概念のもとに構成。現在はSF-36v2.0が標準版として使用され、全36問で主に8下位尺度からなります。

Fukuhara S, Bito S, Green J, Hsiao A, Kurokawa K. Translation, adaptation, and validation of the SF-36 Health Survey for use in Japan. J Clin Epidemiol 1998; 51: 1037-44.
Fukuhara S, Ware JE, Kosinski M, Wada S, Gandek B. Psychometric and clinical tests of validity of the Japanese SF-36 Health Survey. J Clin Epidemiol 1998; 51: 1045-53.

 

mWPAI-GH (modified version of Working Productivity and Activity Impairment-General Health)

労働生産性を評価するためのツール。どれぐらい仕事の時間や生産性が損なわれたのか評価可能、『仕事における生産性の低下』、『欠勤に伴う生産性の低下』、『出勤中の生産性の低下』、『仕事以外の活動における生産性の低下』、をパーセント(%)で示しています。

Reilly MC, Zbrozek AS, Dukes EM. The Validity and Reproducibility of a Work Productivity and Activity Impairment Instrument. PharmacoEconomics 1993;4(5):353-365

バイエルについて

バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社について

バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業からなるヘルスケア企業です。医療用医薬品部門では、循環器・腎臓領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に注力しています。コンシューマーヘルス部門では、プレナタルサプリメントや腟カンジダ抗真菌剤に注力しています。同社は、技術革新と革新的な製品によって、日本の患者さんの「満たされない願い」に応える先進医薬品企業を目指しています。詳細はwww.pharma.bayer.jpご参照ください。

 

バイエル薬品株式会社
2022年5月10日、大阪

将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)

このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。