本資料は8月28日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。
バイエル、経口第XIa因子阻害剤asundexianの第Ⅲ相臨床試験プログラムを開始
- 最大3万人を組み入れるOCEANICプログラムを心房細動患者および非心原性虚血性脳卒中・ハイリスク一過性脳虚血発作患者における脳卒中イベントの発現抑制に関してasundexianの有効性と安全性を検討する2つの第Ⅲ相臨床試験より開始
- バイエルは選択的抗凝固作用により患者さんの予後を改善する新しいクラスの抗血栓薬の提供を目指し血液凝固第XIa因子(FXIa)阻害剤の開発を推進
ドイツ・ベルリン、2022年8月28日 ― ドイツ・バイエル社は、心房細動患者および非心原性虚血性脳卒中・ハイリスク一過性脳虚血発作患者に対する新たな治療薬候補として、経口FXIa阻害剤asundexianの有効性と安全性を検討する第Ⅲ相臨床試験プログラム「OCEANIC」の開始を本日発表しました。
血液凝固第XI因子は血液中のタンパク質で、血液凝固カスケードの一部として活性型酵素(第XIa因子)に変換されます。第XI因子は、止血と血栓形成を分け、病的な血栓形成と正常な血栓形成において重要な役割を果たすことから、より安全な抗凝固薬の開発において有望かつ差別化された標的となります。先天性第Ⅺ因子欠乏症患者は、静脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクが低いものの、まれに突発性出血を起こすことがあります1。OCEANICプログラムは、asundexianが出血リスクの増大を伴わずに病的な血栓形成から患者を守る可能性を評価するよう設計されており、ベネフィットとリスクのプロファイルを既存の治療選択肢より改善することを目指しています。FXIa阻害剤は、FXIaの阻害により血液凝固を選択的に阻害し、血栓形成を抑制しながらも創傷治癒に重要な止血のための血栓形成は可能とする抗血栓療法の根本的な新しいアプローチとなる可能性があります。
OCEANICプログラムは、第Ⅱ相臨床試験プログラムPACIFICから得られたデータに基づき開始します。後期第Ⅱ相臨床試験PACIFIC-STROKE2およびPACIFIC-AMI3ではそれぞれ、急性非心原性虚血性脳卒中患者または急性心筋梗塞発症後患者を対象に、asundexianの安全性と有効性がプラセボと比較検討されました。asundexianの安全性は2試験ともに、基礎治療にかかわらずプラセボ群と同程度という一貫した結果が示されました。以前発表されたPACIFIC-AF試験4(心房細動)を含め、試験が完了した後期第Ⅱ相臨床試験プログラムPACIFICから得られたデータは、asundexianが出血リスクに重大な影響を与えることなく、血栓性イベントの発現リスクを低下させ得るという仮説をさらに支持しています。
マックマスター大学医学部(神経学)准教授のアシュカン・ショアマネシュ氏は次のように述べています。「出血リスクに対する懸念から現在、多くの患者さんが最適とは言えない治療を受けているか、全く治療を受けていないのが実情です。PACIFIC試験では出血に関して有望なデータが得られ、asundexianが出血リスクの増大を伴わずに血栓塞栓イベントの発現を抑制する可能性を持つことが示されました。それがもし確認されれば、asundexianは新たな治療法の可能性をもたらし、患者さんへの治療の向上に貢献するでしょう」
デューク大学循環器内科チーフ、ハートセンター共同ディレクターで、リチャード・S・スタック特別栄誉教授のマネッシュ・パテール氏は次のように述べています。「われわれは、直接作用型経口抗凝固薬の導入により、抗凝固療法を必要とする患者さんに大きな進歩をもたらしました。しかし、抗凝固療法を受けられない患者さんや、血栓症の予防のためにほかの治療選択肢を必要とされる患者さんがまだいます。第Ⅲ相臨床試験プログラムOCEANICは、この重要な疾患領域における新たな治療選択肢の候補として、asundexianのデータをより多く創出するために不可欠な次のステップです」
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「豊富な経験と疾患への深い理解を持つバイエルは、特に抗凝固領域で強みを発揮し、1億人を超える患者さんの生活に大きく貢献してきました。FXIa阻害に着目し、現在の治療法よりもベネフィットとリスクのプロファイルが改善される可能性のある新しいクラスの抗血栓薬の研究を行い、さらなるパラダイムシフトを目指しています。FXIaの科学的知識と、asundexianの特に安全性を裏付ける第Ⅱ相臨床試験データより、重要な治療領域に対応するため、asundexianを第Ⅲ相臨床試験に進められると確信しています。OCEANICプログラムは、バイエルがこれまでに実施した最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムの1つです。われわれの明確な目標は、血栓性イベントの発現を抑制する新しい治療選択肢を開発することです」
第Ⅲ相臨床試験プログラムOCEANICは、2つの大規模国際共同試験(OCEANIC-AF試験、OCEANIC-STROKE試験)から開始され、40カ国以上より最大3万人の被験者の組み入れが予定されています。
OCEANIC-AF試験では心房細動患者を対象に、asundexianとアピキサバンの比較試験が実施される予定です。OCEANIC-AF試験の主要目的は、脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制効果を確認するとともに、asundexian投与患者において、アピキサバン投与患者と比べより低い出血リスクを示すことです。最初の患者登録は年内の予定です。
OCEANIC-STROKE試験は、非心原性虚血性脳卒中またはハイリスク一過性脳虚血発作の発症後患者を対象に、asundexianを標準治療の抗血小板療法に上乗せ投与した場合について検討するプラセボ対照試験になる予定です。OCEANIC-STROKE試験の主要目的は、プラセボと比べ、出血リスクを有意に増加させることなく虚血性脳卒中のリスク低下を示すことです。1日1回投与の経口FXIa阻害剤asundexianには選択的な抗凝固作用があることから、血栓症の発症抑制における新たな治療選択肢候補として検討しています。
PACIFIC-STROKE試験について2
PACIFIC-STROKE試験は、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、用量設定後期第Ⅱ相臨床試験で、急性非心原性虚血性脳卒中発症後患者を対象に、asundexianの安全性と有効性が検討されました。本試験の目的は、急性非心原性虚血性脳卒中発症後患者において、抗血小板剤の単剤療法(SAPT)または2剤併用療法(DAPT)に上乗せしたasundexianの有効性と出血プロファイルの用量反応性をプラセボと比較検討することでした。有効性の主要評価項目は、症候性虚血性脳卒中とMRIで検出された無症候性脳梗塞の複合であり、安全性の主要評価項目は、国際血栓止血学会(ISTH)基準による重大な出血事象と重大ではないが臨床的に問題となる出血事象でした。本試験には、23カ国、196施設より被験者1,808人が登録されました。すべての被験者は、発症後48時間以内に治験薬の投与が開始され、26週間~52週間にわたり投与が継続されました。被験者には、SAPTまたはDAPTに上乗せしてasundexian経口剤10mg、20mg、50mgまたはプラセボが1日1回投与されました。asundexianは、標準療法の抗血小板療法に上乗せ投与された場合に、プラセボと同程度の安全性が示されました。本試験には有効性を検証するための検出力はありませんでしたが、虚血性脳卒中イベントの再発抑制に関するデータが得られました。PACIFIC-STROKE試験の結果は、査読付きの医学誌に受理されています。
PACIFIC-AMI試験について3
PACIFIC-AMI試験は、多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、用量設定後期第Ⅱ相臨床試験で、急性心筋梗塞発症後患者を対象に、asundexianの安全性と有効性が検討されました。本試験では、標準治療のDAPTに上乗せしてasundexian経口剤10mg、20mg、50mgを1日1回投与し、プラセボと比較検討されました。有効性の主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症の複合であり、安全性の主要評価項目は、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)出血分類の2、3、5型でした。23カ国、157施設より被験者1,601人が無作為割り付けされました。すべての被験者は、インデックス心筋梗塞イベントによる入院後5日以内に治験薬の投与が開始され、26週間から52週間にわたり投与が継続されました。asundexianはDAPTと併用した場合、出血を含む安全性データはプラセボと同程度であり、忍容性が良好でした。本試験は、血栓性イベント発現の差異を検証するための検出力はありませんでした。PACIFIC-AMI試験の結果は本日、医学誌サーキュレーションのオンライン版(2022年8月28日)に同時掲載されました。
PACIFIC-AF試験について
PACIFIC-AF試験は、無作為化、二重盲検、用量設定第Ⅱ相臨床試験で、CHA2DS2-VAScスコアが男性2点以上、女性3点以上の出血リスクが高い心房細動患者を対象に、asundexian 20mgまたは50mg 1日1回投与とアピキサバン1日2回投与が比較検討されました。主要評価項目は、重大な出血事象、または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の複合でした。asundexian 20mg、50mgの投与はいずれも、アピキサバンと比較して出血事象の発現が低く(各用量群の統合データにおける発現率の比0.33)、生体内のFXIaをほぼ完全に阻害することが示されました。本試験は、血栓性イベント発現率の差異を識別し、検証するための検出力はありませんでした。
FXIa臨床試験プログラムについて
後期第Ⅱ相臨床試験プログラムPACIFICは、心房細動(不整脈)、急性非心原性虚血性脳卒中、急性心筋梗塞(心臓発作)のいずれかの疾患を対象とする3つの後期第Ⅱ相臨床試験で構成されています。PACIFICは、世界で最も広範なFXIaの後期第Ⅱ相臨床試験プログラムの1つであり、これまでに被験者4,000人以上が組み入れられています。PACIFICは、血栓症領域において過去最大規模かつ最も幅広く検討が行われたリバーロキサバン研究プログラムで築いた知見を継承するとともに、治療が行き届いていない循環器疾患患者が増える中で、アンメットニーズに対応するというバイエルのコミットメントを実現するものです。
これらの臨床試験に関する詳細情報は、http://www.clinicaltrials.gov/よりご覧いただけます。これらの臨床試験のNational Clinical Trial番号は、PACIFIC-STROKE試験(非心原性虚血性脳卒中)がNCT04304508、PACIFIC-AMI試験(心筋梗塞)がNCT04304534、PACIFIC-AF試験(心房細動)がNCT04218266です。
asundexianとFXIa阻害剤について
FXIa阻害剤は、病的な血栓形成に関与するタンパク質を標的として特異的に作用する一方、生理的な血管壁の創傷治癒に関与する経路には作用しません。asundexianは、凝固系を選択的に阻害することにより、出血リスクの増大を伴わずに脳卒中や急性心筋梗塞などの発症を抑制する可能性があります。asundexianは現在、血栓症の発症抑制における新しい治療選択肢として検討されています。asundexianは1日1回経口投与の治験薬であり、審査当局によって使用が承認された国や適応症はありません。
心房細動について
心房細動は、最も一般的な持続性心調律異常です。心房細動では、心臓の上室(心房)が不規則に収縮します5。その結果、心房が完全に空にならず、血液が適切に流れなくなり、血栓が形成される可能性があります。このような血栓は、はがれて脳に移動し、脳卒中を引き起こすことがあります6。
脳卒中について
脳卒中は、世界で2番目に多い死亡原因です。脳卒中は、出血性脳卒中と虚血性脳卒中の2つに大別され、脳卒中全体の85%は虚血性脳卒中です。虚血性脳卒中は、血栓などによる閉塞により、脳への血液供給が妨げられることで発症します。血液が脳に届かなくなると、脳細胞は酸素不足により壊死します。脳卒中になると、重度の運動機能制限、麻痺、言語や視覚の喪失(これらは永続的な場合もあります)のほか、死に至ることさえもあります。
References:
1. Georgi B, Mielke J, Chaffin M, et al. Leveraging Human Genetics to Estimate Clinical Risk Reductions Achievable by Inhibiting Factor XI. Stroke. 2019 Nov;50(11):3004-3012. doi: 10.1161/STROKEAHA.119.026545. Epub 2019 Sep 27. PMID: 31558144; PMCID: PMC6824502.
2. Study to Gather Information About Proper Dosing and Safety of the Oral FXIa Inhibitor BAY 2433334 in Patients Following a Recent Non Cardioembolic Ischemic Stroke Which Occurs When a Blood Clot Has Formed Somewhere in the Human Body (But Not in the Heart) Travelled to the Brain. (PACIFIC-STROKE), https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04304508
3. Study to Gather Information About the Proper Dosing and Safety of the Oral FXIa Inhibitor BAY 2433334 in Patients Following an Acute Heart Attack (PACIFIC-AMI), https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04304534
4. Piccini JP, Caso V, Connolly SJ et al. Safety of the oral factor XIa inhibitor asundexian compared with apixaban in patients with atrial fibrillation (PACIFIC-AF): a multicentre, randomised, double-blind, double-dummy, dose-finding phase 2 study. Lancet 2022; 399:1383–1390. Available here: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)00456-1/fulltext. Last accessed: August 2022.
5. NHS choices. Atrial fibrillation. Available at: http://www.nhs.uk/Conditions/Atrial-fibrillation Accessed March 2022
6. NHS choices. Atrial fibrillation complications. Available at: http://www.nhs.uk/Conditions/Atrial-fibrillation/Pages/Complications.aspx Accessed March 2022
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2022年9月2日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
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