本資料は2月16日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。
ダロルタミドは、ASCO GUで発表された新規データにより、転移性ホルモン感受性前立腺癌患者のさまざまなサブグループにおける生存期間延長効果および良好な安全性プロファイルが確認された
- 第Ⅲ相ARASENS試験の新たなサブグループ解析では、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して、さまざまな疾病負担とリスクを有する転移性前立腺癌患者さんにおいて、全生存期間(OS)を延長し、臨床的に重要な主要な評価項目を改善
- ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法の良好な安全性プロファイルも再確認
- サブグループ解析の結果は、米国泌尿生殖器癌シンポジウム(ASCO GU:American Society of Clinical Oncology Genitourinary Cancers Symposium)にて口頭発表され、同時にジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジーに掲載
ベルリン、2023年2月16日 ― 第Ⅲ相ARASENS試験の新たなサブグループ解析データより、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して、高腫瘍量 および低腫瘍量 、また、高リスクおよび低リスクの転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)患者さんにおいて、全生存期間(OS)の延長が示されました。有害事象全体の発現割合は、引き続き投与群間で同様の結果を示しています。解析の詳細な結果は、2023年米国臨床腫瘍学会泌尿器生殖器がんシンポジウム(ASCO GU:American Society of Clinical Oncology Genitourinary Cancers Symposium)にて口頭発表され、同時にジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジーに掲載されました1。
米国・シカゴの Genevieve Teuton Professor of Medicine in the Division of Hematology Oncology, Department of Medicine, and the Deputy Director at the Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Center of the Northwestern University Feinberg School of Medicineの Maha Hussain, M.D.,は次のように述べています。「ARASENS試験から得られたデータは、mHSPC患者さんの治療におけるダロルタミドの価値を引き続き実証するものです。特に高腫瘍量または高リスクな患者さんにおいて、そのベネフィットが示唆されています。今回の結果から、この治療法によってよりベネフィットが得られる可能性のあるmHSPC患者群について、さらに深い洞察が得られました」
ドイツ・バイエル社のシニア・バイス・プレジデントで医療用医薬品部門のオンコロジー開発責任者のタラ・フレンケルは次のように述べています。「近年の医学技術の進歩にもかかわらず、生活の質を維持しながら、生存期間を延長し、疾患の進行を遅らせる治療薬に対するニーズは依然として高いままです。ARASENS試験のサブグループ解析は、ダロルタミドがさまざまなタイプの転移性前立腺癌患者さんの基本治療となる可能性を強調するものです。バイエルには、治療に変革を起こし、さまざまな病期の前立腺癌患者さんの治療アウトカムを改善するという重要なミッションがあります。できるだけ多くの適格な患者さんにダロルタミドのベネフィットを確実に届けられるよう、今後も注力してまいります。」
ARASENS試験において、患者さんをADT+ドセタキセルに加えてダロルタミドを投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けました。高腫瘍量は、CHAARTED試験の基準に記載されているとおり、内臓転移および/または骨転移4カ所以上[少なくとも1カ所以上は脊椎または骨盤外の転移]と定義されています。高リスク疾患は、LATITUDE試験の基準を用いて定義されており、グリーソンスコアが8以上、骨病変が3個以上、および測定可能な内臓転移の存在のうち、2つ以上の因子を有する疾患です。解析対象集団である1,305名の患者さんのうち、1,055名(77%)が高腫瘍量、912名(70%)が高リスク、300名(23%)が低腫瘍量、393名(30%)が低リスクに該当しました。
サブグループ解析の結果から、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して、高腫瘍量を有する患者さんにおいてOSの延長が示されました(ハザード比[HR] = 0.69、95%信頼区間[CI]:0.57-0.82)。また、高リスク疾患(HR = 0.71、95% CI:0.58-0.86)患者さんおよび低リスク疾患(HR = 0.62、95% CI:0.42-0.90)患者さんの両方で一貫したOSの延長が観察されました。少数例であった低腫瘍量群では、ダロルタミドによる生存期間の延長を示唆する結果にとどまりました(HR = 0.68、95% CI:0.41-1.13)。また、ADT+ドセタキセル群と比較した場合、ダロルタミド併用療法群では、高または低腫瘍量、および高または低リスクを問わず、臨床的に意義のある主要な副次評価項目で有効性が示唆されました。 治療に関連した有害事象の発現率は、サブグループを問わず、ARASENS試験の全対象集団と一致していました。
mHSPCと診断された患者さんの5年以上の生存率はわずか30%です2。ほとんどのmHSPC患者さんは、最終的に予後不良な転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に進行します3,4。
サブグループ解析の結果は、ADT+ドセタキセルの併用療法と比較して、mHSPC患者さんの死亡リスクを有意に32.5%低減することが示された全対象集団の結果と同様に、ARASENS試験から得られた既存のデータを補強するものでした(HR = 0.68、95% CI:0.57-0.80、P<0.001)5。生活の質、 疾患関連の身体症状や疼痛のコントロールを伴う生活の質を維持する能力などを問わず、患者さんにとって重要な評価項目でも治療による有効性が認められました6。
ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法は、mHSPC患者さんの治療薬として、欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)により欧州連合(EU)における製造販売承認勧告を受けました。今後数カ月以内に製造販売承認の最終決定が行われる見込みです。本剤は、2つめの適応症であるmHSPCの治療薬として、ニュベクオの製品名で、すでに米国を含む多くの国や地域で承認を取得しています。その他の国や地域の規制当局に対する製造販売承認は、申請中または申請予定です。FDAのOncology Center of Excellence(OCE)が主導するProject Orbisの下でも審査が継続しています。同プロジェクトは、参加国の規制当局における癌治療薬の同時申請および審査の枠組みを構築しています。
新たに進行中または計画中の大規模臨床試験3試験を含む広範囲な開発プログラムを実施しており、前立腺癌の早期から後期までのさまざまな病期の患者さんを通してダロルタミドの可能性の検討を進めています。海外では、このプログラムにmHSPCを対象としてダロルタミド+ADTとADT単独を比較評価した第Ⅲ相試験であるARANOTE試験などが含まれます。
ダロルタミドは、バイエルと、フィンランドを拠点としたグローバル製薬企業であるオリオン・コーポレーションが共同で開発を行っています。
【ARASENS試験について】
ARASENS試験は、遠隔転移を有する前立腺癌患者を対象として、経口の第2世代アンドロゲン受容体阻害剤(ARi)であるダロルタミドにアンドロゲン遮断療法(ADT)と化学療法のドセタキセルを加えた併用療法の有効性および安全性を、海外のガイドラインで推奨される標準治療のひとつであるADT+ドセタキセルの併用療法と比較検討する、前向きにデザインされた、唯一の第Ⅲ相無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照臨床試験です。新たに診断された1,306名の患者を、標準治療であるADT+ドセタキセルに加えてダロルタミド600 mgを1日2回投与するダロルタミド群と、ADT+ドセタキセルに加えてプラセボを投与するプラセボ群に、1:1で無作為に割り付けました。
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。副次評価項目は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行するまでの期間、次の抗癌治療を開始するまでの期間、症候性骨関連事象(SSE)無発現生存期間、SSE初回発現までの期間、オピオイド初回使用までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間であり、これらをすべて12週間の間隔で測定しました。また、安全性および忍容性の評価項目として有害事象も評価しました。本試験の結果は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されました5。これらのデータを簡潔にまとめた出版物がフューチャー・オンコロジーに掲載されました7。ARASENS試験では、ADT+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示されました5。各副次評価項目の改善は、主要評価項目である生存期間の延長を補足するものでした5。
【遠隔転移を有する前立腺癌について】
前立腺癌は世界の男性における癌の中でも2番目に多く、2020年には世界で推定140万人が前立腺癌と診断され、およそ37万5千人が死亡しました8。
診断時、ほとんどの患者さんは前立腺癌が前立腺のみにある限局性の状態で、根治目的の外科手術や放射線療法で治療可能です。転移が認められる再発後は、アンドロゲン遮断療法(ADT)がホルモン感受性前立腺癌の基本治療となります。遠隔転移を有する前立腺癌患者さんの現在の治療選択肢としては、ADTなどのホルモン療法、アンドロゲン受容体阻害剤とADTの併用療法、化学療法のドセタキセルとADTの併用療法などがあります。このような治療にもかかわらず、ほとんどの遠隔転移を有する前立腺癌患者さんは予後不良な去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に進行します。
【ニュベクオ®(ダロルタミド)について】
ダロルタミドは、経口で投与するアンドロゲン受容体阻害剤(ARi)で、受容体と高い親和性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造を持っています。これにより、受容体機能と前立腺癌細胞の増殖を阻害します。本剤は、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)の治療薬として、 ニュベクオ®の製品名で米国、EU、日本、中国を含めた世界の80以上の国や地域で承認されています。海外では、転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)を対象にした第Ⅲ相試験であるARANOTE試験や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺癌の術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第Ⅲ相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺癌患者を対象に臨床試験を実施しています。これらの試験に関する情報はwww.clinicaltrials.govで確認できます。さらに、外科手術や放射線療法後に前立腺特異抗原(PSA)値の上昇が認められた患者さんを対象として、早期のダロルタミド投与による治療の可能性を検討する試験も計画されています。
出典:
1. Hussain, M. et al. Darolutamide Plus Androgen-Deprivation Therapy and Docetaxel in Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer by Disease Volume and Risk Subgroups in the Phase III ARASENS Trial. J Clin Oncol. 2023;41:1-13.
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.23.00041
2. Ng, K., Smith, S., Shamash, J. Metastatic Hormone-Sensitive Prostate Cancer (mHSPC): Advances and Treatment Strategies in the First-Line Setting. Oncol Ther. 2020;8:209–230. https://doi.org/10.1007/s40487-020-00119-z .
3. Siegel DA, O’Neil ME, Richards TB, Dowling NF, Weir HK. Prostate Cancer Incidence and Survival, by Stage and Race/Ethnicity — United States, 2001–2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69:1473–1480
4. Hahn AW, Higano CS, Taplin ME, Ryan CJ, Agarwal N. Metastatic Castration-Sensitive Prostate Cancer: Optimizing Patient Selection and Treatment. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2018 May 23;38:363-371. https://doi.org/10.1200/edbk_200967.
5. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and Survival in Metastatic, Hormone-Sensitive Prostate Cancer. N Engl J Med. 2022; 386:1132–1142.
6. Fizazi, K et al. Quality of life and patient-relevant endpoints with darolutamide in the phase III ARASENS study. European Society for Medical Oncology Congress 2022; September 11, 2022; Paris, France. Abstract 1360MO.
7. Smith M., Hussain M., Saad F. et al. Darolutamide and survival in metastatic, hormone-sensitive prostate cancer: a patient and caregiver perspective and plain language summary of the ARASENS trial. Future Oncol. 2022;18:21:2585-2597. https://doi.org/10.2217/fon-2022-0433
8. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.3322/caac.21660. Accessed December 2022
【バイエルにおける前立腺癌について】
バイエルは、革新的治療薬のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」を実現できるよう取り組んでいます。バイエルは熱意と決意をもって、癌と共に生きる人々の生活を向上し、生存期間を延長できるような新規医薬品の開発に取り組んでいます。前立腺癌は男性において2番目に多い癌であり1、バイエルの主要な重点疾患領域でもあります。バイエルの製品フランチャイズには、上市した2種類の製品(ニュベクオ®およびゾーフィゴ®)と、標的α線治療におけるユニークなアプローチを含む開発段階の化合物が複数あります。バイエルは、前立腺癌のさまざまな病期を通して生存期間を延長する治療薬を提供し、患者さんが毎日の活動を継続し、より良い人生をより長く生きられるよう、前立腺癌患者さん特有のニーズに対応することに注力しています。
【バイエルについて】
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力します。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は441億ユーロ、従業員数は約100,000名(2021年)。特別項目計上前の研究開発費は53億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2023年2月28日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
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