本資料は8月24日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.press.bayer.comをご参照ください。
幅広い心不全患者を対象にフィネレノンの新試験を開始
- 3件の研究者主導共同研究はバイエルが資金を提供し、約9,300人の心不全(HF)患者を対象に非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンの有効性と安全性を評価
- 3試験は現在進行中の第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFの結果を補完
- FINEARTS-HF試験を含むMOONRAKERプログラムは全体で15,000人以上を対象とするこれまでで最大規模のHF臨床試験プログラムであり、目的はフィネレノンの幅広い患者と実臨床下でのHF治療薬としての包括的理解の確立
ドイツ・ベルリン、2023年8月24日 ― ドイツ・バイエル社は、フィネレノンを用いたHF臨床試験プログラムMOONRAKERを拡大するため、新たに3試験の開始を支援します。左室駆出率(LVEF)が軽度低下または保たれたHF患者6,000人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較する進行中の第Ⅲ相試験FINEARTS-HFに加え、新たな試験では、LVEFの低下したHF(HFrEF)、軽度低下したHF(HFmrEF)、保たれたHF(HFpEF)の患者計約9,300人を追加して、フィネレノンの有効性と安全性を評価します。全体で15,000人以上を対象とするMOONRAKERプログラムは、これまでで最大規模のHF臨床試験プログラムになる見込みです。新試験3件は研究者主導共同研究であり、幅広いHF患者を対象に、HFイベントおよび心血管死の発現率減少に関して標準治療に上乗せしたフィネレノンとプラセボ、またはフィネレノンとナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬の併用と標準治療とを比較検討します。これらの試験のスポンサーは、米国コロラド大学付属の非営利アカデミック臨床研究機関であるCPC Clinical Research (CPC)です。CPCは、他のアカデミック臨床研究機関、および本プロブラムに資金提供するバイエルと共同で、MOONRAKERプログラムの新試験3件を実施します。
MOONRAKERプログラムの学術責任者を務めるSaint Luke’s Mid America Heart Institute(米国カンザスシティ)のMikhail Kosiborod氏は次のように述べています。「MOONRAKERプログラムは、いくつかの重要な目的に対応するようデザインされています。FINEARTS-HF試験の知見をHFmrEFまたはHFpEF患者の中でよりリスクが高く、より急性期の集団に拡大すること、また、LVEFにかかわらず、HFで入院している患者さんに集中的な併用療法を早期に実施するためのエビデンスを構築すること、さらに、ステロイド型MRAに不耐容または不適応のHFrEF患者の大部分に対する貴重な追加エビデンスを創出することです」
ドイツ・バイエル社チーフ・メディカル・オフィサーで、医療用医薬品部門メディカルアフェアーズ&ファーマコビジランス責任者のマイケル・デヴォイは次のように述べています。「REDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験、FINALITY-HF試験がMOONRAKER HF臨床試験プログラムに加わることにより、HF治療薬としてのフィネレノンを包括的に理解することを目指し、幅広い患者さんと実臨床下におけるフィネレノンの有効性と安全性を検討します。3件の新たな試験は、バイエルの第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFを補完し、得られた知見より、HFの多大な疾病負荷を軽減して患者さんの予後を改善するためのフィネレノンの臨床使用の可能性について、新たな指針が得られることをと期待しています」
第Ⅲ相臨床試験REDEFINE-HFは、非代償性HFで入院または退院直後のHFmrEFまたはHFpEF患者を対象とするフィネレノンの投与開始に関し、プラセボと比較したデータが得られます。第Ⅲ相臨床試験CONFIRMATION-HFでは、LVEFにかかわらず、入院したHF患者を対象に、フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期同時併用療法の開始が標準治療と比較して、優れた臨床的有用性をもたらすかどうかを検討します。第Ⅲ相臨床試験FINALITY-HFでは、スピロノラクトンやエプレレノンなどのステロイド型MRAが不耐容または適さないHF患者を対象に、フィネレノンとプラセボを比較検討します。
ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性がある心血管系および腎臓の障害に寄与します。フィネレノンは、MRに選択的に結合し、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することから、新たな治療選択肢を提供します。
【MOOMRAKER HF臨床試験プログラムについて】
HF患者を対象にフィネレノンを検討するMOONRAKERプログラムには、4件の第Ⅲ相臨床試験が含まれます。
- FINEARTS-HF試験(現在進行中)は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型第Ⅲ相臨床試験で、LVEF40%以上(HFmrEF/HFpEF)の症候性HF患者を対象に、標準治療にフィネレノンを上乗せしたときの有効性(心血管死、すべてのHFイベント)と安全性をプラセボと比較検討します。
- 第Ⅲ相臨床試験REDEFINE-HFは、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、多施設共同、イベント主導型試験です。LVEF40%以上(HFmrEF/HFpEF)の非代償性HFと診断され、入院中または退院直後の患者約5,200人を対象に、すべて(初発・再発)のHFイベントおよび心血管死の発現率減少に関し、標準治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性をプラセボと比較検討します。
- 第Ⅲ相臨床試験CONFIRMATION-HFは、無作為化、比較、非盲検試験です。LVEFにかかわらず、HFによる入院(またはHFによる入院の退院直後)患者約1,500人を対象に、SGLT2阻害薬にフィネレノンを上乗せした場合と、標準治療とを比較検討します。
- 第Ⅲ相臨床試験FINALITY-HFは、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、多施設共同、イベント主導型試験です。スピロノラクトンやエプレレノンなどのステロイド型MRAによる治療が不耐容または適さないLVEF40%未満のHFrEF患者約2,600人を対象に、心血管死またはHFイベントの発現率減少に関し、標準治療にフィネレノンを上乗せしたときの有効性と安全性をプラセボと比較検討します。
新試験3件(REDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験、FINALITY-HF試験)は、研究者主導共同研究です。米国コロラド大学付属の非営利アカデミック臨床研究機関であるCPCがスポンサーとなり、他のアカデミック臨床研究機関、および本プロブラムに資金提供するバイエルと共同でこれらの試験を実施します。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFと慢性腎臓病(CKD)をそれぞれ対象とした10件の第Ⅲ相臨床試験で構成されています。CKDのTHUNDERBALLプログラムは、FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験、FIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験、および第Ⅱ相臨床試験CONFIDENCEで構成されています。一方、HFのMOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験、REDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験、FINALITY-HF試験が含まれています。
【ケレンディア®/Firialta™(フィネレノン)について】
ケレンディア®およびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAで、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。
フィネレノンは、ケレンディア®(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界70カ国以上で承認されています。
【心不全(HF)について】
HFは、体内の血液と酸素に対する需要に見合う十分な血液を送り出す心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しています1。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています2,3,4。5人に1人がHFを発症するとみられています5。HF患者は予後不良であり、死亡率は最も一般的ながんと同等かそれ以上です6。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。
危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患です。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します5。
心機能の指標であるLVEFで分類すると、HFは3つのカテゴリーに分けられます。
- LVEFが低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴です(LVEF40%未満)
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため、充満異常を来します(LVEF50%以上)
- LVEFが軽度低下したHF(HFmrHF)は、ほかの2つのカテゴリーの中間に位置するカテゴリーです(LVEF40-49%)
HFpEFでは、利尿薬によるうっ血症状の治療、原因・併存疾患に対する治療が長らく、症状の負荷軽減と入院の予防を目的としたHFpEF治療の中心となっています。HFrEFでは治療が進歩していますが、HFpEFでは治療の選択肢が限られています。
References:
1. Lippi G, Sanchis-Gomar F. AME Med J. 2020 Jun 25;5(15):1-6
2. Savarese G, et al. Global Public Health Burden of Heart Failure. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
3. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access February 2023
4. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
5. Virani SS et al. Circulation. 2021 Feb 23;143(8):e254-e743
6. Mamas MA et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、「Science for a better life」をお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメット・メディカル・ニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。その製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。グループ全体の売上高は507億ユーロ、従業員数は約101,000名(2022年)。特別項目計上前の研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエルのビジョンについて
世界中のバイエル社員は、「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」というビジョンの実現に向け、革新的な製品とサービスを通じて、医療と食糧へのアクセス向上に貢献しています。私たちは、飢餓をなくし、すべての人々が健康的な生活を送れるよう疾病の予防、緩和、治療を支えると同時に、持続可能な農業と生態系の保護を目指しています。詳細はwww.bayer.jpをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2023年8月28日、大阪
将来予想に関する記述(Forward-Looking Statements)
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