本資料は9月1日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
アンメットメディカルニーズの高い成人心不全患者においてフィネレノンが心血管アウトカムの統計学的に有意な改善を示す
- フィネレノンは左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HF)患者(LVEFが軽度低下または保たれたHF患者)を対象とした第Ⅲ相臨床試験で明確な心血管へのベネフィットを示した初めてのミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬
- フィネレノンはプラセボと比較して主要複合評価項目の心血管死およびすべての(初回および再発)HFイベントの相対リスクを16%減少
- 主要評価項目は併存疾患、入院状況、LVEF、ベースラインでのSGLT2阻害薬の使用有無など事前に規定したすべてのサブグループで一貫した結果
- FINEARTS-HF試験の結果は医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載
- LVEF 40%以上のHF患者はアンメットメディカルニーズが高く、入院率および死亡率はLVEFの低下したHF患者(LVEF 40%以下)*と同程度であるものの、承認され、かつガイドラインに基づく標準治療の選択肢は限られる
ドイツ・ベルリン、2024年9月1日 ― 第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFの詳細な結果より、フィネレノン(ケレンディアⓇ/Firialta™)がLVEF 40%以上のHF患者において、プラセボと比較して心血管アウトカムを統計学的に有意に改善することが示されました。フィネレノンは、主要複合評価項目である心血管死およびすべての(初回および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)のリスクを32カ月間(中央値)にわたり、16%有意に減少させました(相対リスク減少、率比[rate ratio:RR]0.84[95%CI、0.74-0.95;p=0.0072])。FINEARTS-HF試験の結果を基に、フィネレノンはLVEF 40%以上のHF患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験で、明確な心血管へのベネフィットを示した初めてのMR拮抗薬となります。FINEARTS-HF試験の結果は、2024年ESC学術集会のホットラインセッションで発表され、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載されました。
エドワード・D・フローリッヒ・ディスティングイッシュト・チェア、ハーバード大学医学部教授、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院非侵襲的心臓病学部長兼上級医師で、本試験の運営委員会委員長であるスコット・D・ソロモン氏は次のように述べています。「LVEF 40%以上のHF患者さんへの治療は多くの医師にとって大きな課題であり、これらの患者さんでは重篤な心血管イベントのリスクが高く、高いアンメットメディカルニーズがあります。LVEFの低下したHFでは現在多くの治療法がある一方で、LVEF 40%以上のHFでは有効性が証明された治療選択肢は現在限られています。FINEARTS-HF試験は、このようなHFの患者さんを対象とした非ステロイド型選択的MR拮抗薬で初めての大規模試験であり、フィネレノンがHFの適応で利用可能になれれば、こうした脆弱な患者さんの助けになる可能性があります」
主要評価項目で示されたベネフィットは、病態(LVEF)やベースラインでのSGLT2阻害薬の使用有無を含め、基礎治療、併存疾患、入院状況にかかわらず、事前に規定されたすべてのサブグループで一貫していました。フィネレノンは、副次評価項目であるすべてのHFイベントも有意に減少させ(RR 0.82[95%CI、0.71-0.94;p=0.0062])、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の総合症状スコア(TSS)のベースラインからの変化量で評価される患者報告による健康状態を改善しました(群間差1.6ポイント[95%CI、0.8-2.3;p<0.0001])。
世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており1、HF患者の約半数はLVEF 40%以上のHFです2,3,4。LVEF 40%以上のHFにはmultimorbidity(多疾患併存)が関連し、症状の管理は複雑になります。時間的傾向より、LVEF 40%以上のHF患者が増加し、HFによる入院患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています5。LVEF 40%以上のHF患者の入院率と死亡率は、LVEF 40%以下(LVEFの低下したHF、HFrEF)*のHF患者と同様です6。LVEF 40%以上のHF患者の半数以上が5年以内に亡くなります。LVEF 40%以上のHF患者は利用できる治療があるにもかかわらず、心血管イベントと死亡の残余リスクが依然として高いままです。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門研究開発責任者のクリスチャン・ロンメルは次のように述べています。「バイエルは循環器領域で確固たる地位を築いており、HFは当社にとって重要な重点領域です。今回の有望な結果は、この生命にかかわる疾患を抱える患者さんに対する当社の継続的なコミットメントを裏付けています。FINEARTS-HF試験において、フィネレノンは複雑な治療を要する患者集団の心血管アウトカムを改善しました。これは、もしフィネレノンがHFの適応で利用可能になれば、基礎治療や病態にかかわらず、LVEFが軽度低下または保たれたHFにおける貴重な治療選択肢となる可能性を示しています。FINEARTS-HF試験では、試験参加時にHFのため入院中または近い時期に入院していた患者さんの割合が高く、この試験の結果は、十分な治療選択肢のない患者さんの心血管アウトカムを改善するために非常に重要です」
フィネレノンは非ステロイド型選択的MR拮抗薬です。フィネレノンはMRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることにより、心筋線維化などの進行がみられるLVEF 40%以上のHFの特徴に対応します。
FINEARTS-HF試験におけるフィネレノンの忍容性は良好で、フィネレノンの既知の安全性プロファイルと一貫していました。治験薬投与下で発現した重篤な有害事象の発現割合は、フィネレノン群とプラセボ群で同程度でした。高カリウム血症に関連した有害事象は、プラセボ群よりもフィネレノン群でより高い発現割合でした(フィネレノン群9.7%、プラセボ群4.2%)。両群ともに、高カリウム血症による致死的な有害事象はなく、高カリウム血症による入院や治験薬の投与中止はまれでした。また、カリウム値、クレアチニン値の上昇はフィネレノン群でより多く発現しましたが、カリウム値6.0mmol/L超の発現割合はおおむね低値でした。
バイエル社は今後、FINEARTS-HF試験の成績に基づき、フィネレノンの承認申請を規制当局に提出する予定です。
【FINEARTS-HF試験について】
FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディアⓇ)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目でした。
世界37カ国、630カ所以上の施設より約6,000人の被験者が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回投与されました。また、本試験の被験者は、症状および併存疾患の治療のために標準治療を受けました。フィネレノンの1日1回投与は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)の複合リスクを32カ月間(中央値)にわたり、16%有意に減少させました(相対リスク減少、RR 0.84[95%CI、0.74-0.95;p=0.0072])。主要評価項目の各構成要素の結果は、心血管死がハザード比(HR)0.93[95%CI、0.78-1.11]、すべての(初回および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)がRR 0.82[95%CI、0.71-0.94;p=0.0062])でした。また、フィネレノンは、副次評価項目として、KCCQ-TSSのベースラインからの変化量で評価される患者報告による健康状態を有意に改善しました(群間差1.6ポイント[95%CI、0.8-2.3;p<0.0001])。NYHA心機能分類(オッズ比[OR]1.01[95%CI、0.88-1.15])、腎複合アウトカム(HR 1.33[95%CI、0.94-1.89])、全死亡(HR 0.93[95%CI、0.83-1.06])については、フィネレノン群とプラセボ群の間で統計学的に有意な差はみられませんでした。
FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中のMOONRAKER臨床試験プログラムは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。
【ケレンディアⓇ/Firialta™(フィネレノン)について】
ケレンディアⓇおよびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MR拮抗薬であり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のある慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管障害に関与します。
フィネレノンは、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90カ国以上で承認されています。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験および第Ⅱ相臨床試験のCONFIDENCE試験で構成されています。
【HFについて】
HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を心臓に満たし、送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています7,8。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています9,10,11。HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です12。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています13。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。
HFの危険因子には、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患などがあります。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します12。
LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられます:
- LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下*です。
- LVEFが軽度低下したHF(HFmrEF)は、LVEFが41~49%*で、心臓のポンプ機能に何らかの障害がある患者さんのカテゴリーです。
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上です。
LVEF 40%以下*、LVEF 40%以上がそれぞれHF症例の約半数を占めますが、LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなります。時間的傾向からも、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています。LVEF 40%以下*のHFでは治療が進歩していますが、LVEF 40%以上のHFでは治療の選択肢が限られています。
* ESCのHF診療ガイドラインに基づく
References:
1. Lippi G, Sanchis-Gomar F. AME Med J. 2020 Jun 25;5(15):1-6
2. Shahim B, et al. Card Fail Rev. 2023;27;9:e11
3. Redfield MM & Borlaug BA. JAMA. 2023;329:827–838
4. Gladden JD et al. Pflugers Arch. 2014;466(6):1037-1053
5. Oktay AA. Curr Heart Fail Rep. 2013;10(4):401-410
6. Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2023;29(10):1412–1451
7. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
8. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
9. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
10. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024
11. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
12. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
13. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2023年のグループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名、特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2024年9月5日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
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