- 米国Cytokinetics社とaficamtenの日本における開発・商業化に関する独占的ライセンス契約を締結
- 最もよく見られる単一遺伝子循環器疾患である肥大型心筋症に伴う収縮亢進を軽減するようデザインされたaficamten
- Cytokinetics社は契約一時金および近い将来の後払い一時金約7,000万ユーロを受領し、売上に応じたロイヤルティとともに販売マイルストーン達成に応じて最大4億9,000万ユーロの商業化マイルストーンを受領
- バイエル社の循環器領域の事業基盤強化戦略に合致
バイエル社 日本の循環器領域ポートフォリオをCytokinetics社のaficamtenにより強化
大阪、2024年11月19日 ― バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:イン・チェン、以下「バイエル薬品」)は、バイエル社と循環器領域の後期開発品を手掛けるバイオ製薬企業である米国Cytokinetics社(Nasdaq:CYTK)が、日本におけるaficamtenの開発および商業化に関する独占的提携およびライセンス契約(以下「本提携契約」)を締結したことを本日発表しました。本提携契約は、日本人患者を含む一部の国際共同臨床試験はCytokinetics社が実施することを前提としています。aficamtenは、閉塞性・非閉塞性肥大型心筋症患者に対する治療薬候補の心筋ミオシン阻害剤です。
本提携契約は、Cytokinetics社が有するaficamtenの広範な臨床開発プログラムと、アンメットメディカルニーズのある専門性の高い心疾患に対するバイエル薬品の日本における開発・商業化に関する知見と専門性を活用し、日本の患者さんに貢献することを目的としています。
aficamtenの共同開発計画に基づき、バイエル薬品は閉塞性肥大型心筋症の日本人患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施します。一方、Cytokinetics社は、非閉塞性肥大型心筋症患者を対象に実施中の国際共同第Ⅲ相臨床試験ACACIA-HCM、および閉塞性肥大型心筋症の小児患者を対象に実施中の臨床試験CEDAR-HCMを日本に拡大し、日本でバイエル薬品によるaficamtenの承認取得を支援する予定です。
aficamtenは、米国食品医薬品局(FDA)および中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より今年初めに、症候性閉塞性肥大型心筋症の治療薬として画期的治療薬指定(Breakthrough Therapy Designation)を受けました。
バイエル薬品代表取締役社長のイン・チェンは次のように述べています。「これまでの研究開発で明らかになったaficamtenの可能性に大変期待しており、この治療薬を日本の患者さんに一日でも早くお届けしたいと考えています。今回の提携によりバイエル薬品は、バイエルグループが培ってきた創薬、薬事、商業化、ライフサイクルマネジメントに関する幅広い専門知識を活用し、日本における循環器領域への長年にわたるコミットメントをさらに強化していきます。当社はCytokinetics社との連携を通し、アンメットメディカルニーズの高い循環器疾患の患者さんに画期的な治療法をお届けするという使命を果たし続けていきます」
Cytokinetics社社長兼最高経営責任者のロバート・I・ブルーム氏は次のように述べています。「米国および欧州におけるaficamtenの商業化を実現するにあたり、バイエルグループの循環器領域における取り組みと専門知識を活用し、より多くの肥大型心筋症の患者さんにaficamtenを届けることができる可能性を広げる提携契約を同社と締結できることをうれしく思います。この日本に関する重要な取引は、当社の革新的な科学技術への潜在的アクセスを拡大するための豊富なコラボレーションの歴史に続くものです」
Cytokinetics社は本提携契約に基づき、契約一時金として5,000万ユーロを受領し、さらに発売後のマイルストーン達成に応じて最大9,000万ユーロ(うち2,000万ユーロは近い将来の後払い一時金)を受領する資格を有します。また、バイエル社が特定の売上マイルストーンを達成した場合には、最大4億9,000万ユーロの商業化マイルストーンを、さらに日本におけるaficamtenの売上に応じた段階的ロイヤルティを受け取ります。
【aficamtenについて】
aficamtenは、低分子化合物として開発中の選択的心筋ミオシン阻害剤です。治療指数と薬物動態特性に細心の注意を払い行われた広範な化学最適化プログラムにより創製されました。aficamtenは、活性化したアクチン・ミオシンのクロスブリッジの数を心周期ごとに減少させ、肥大型心筋症に関連する心筋の収縮亢進を軽減するようデザインされています。前臨床モデルにおいて、aficamtenは心筋ミオシンに特異的かつ選択的なアロステリック部位に直接結合することにより心筋収縮力を低下させ、ミオシンが動力供給状態になるのを抑制しました。
aficamtenの臨床開発プログラムでは、肥大型心筋症患者の運動耐容能を改善し、症状を緩和する治療薬としての可能性と、心臓の構造と機能に対する長期的効果の可能性を評価しています。aficamtenは、症候性閉塞性肥大型心筋症患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験SEQUOIA-HCM(Safety, Efficacy, and Quantitative Understanding of Obstruction Impact of Aficamten in HCM)で検討されました。aficamtenは、米国FDAおよび中国NMPAより症候性閉塞性肥大型心筋症の治療薬として、画期的治療薬指定を受けました。Cytokinetics社は、2024年第3四半期にFDAへaficamtenを新薬承認申請しており、2024年第4四半期には欧州医薬品庁(EMA)へ販売承認申請を行う予定です。
【肥大型心筋症について】
肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなる(肥大する)病気です。心筋が肥大すると、左心室の内腔が小さく硬くなり、左心室が弛緩して血液を充満する能力が低下します。これにより最終的に心臓のポンプ機能が制限され、運動耐容能の低下や、運動中の胸痛、めまい、息切れ、失神などの症状が現れます。閉塞性肥大型心筋症は心筋の肥厚により左室流出路が閉塞している一方、非閉塞性肥大型心筋症は血流には影響がないものの、心筋が肥厚しています。肥大型心筋症は最もよく見られる単一遺伝子循環器疾患です。肥大型心筋症は、日本では難病指定されています。難病認定を受けた患者さんを対象とする2021年度の医療受給者証所持者数は4,201人とされていますが、心エコー検査によるスクリーニングでは、一般人口の500人から1,000人に1人に認められるとの報告もあります1。肥大型心筋症患者は、心房細動、脳卒中、僧帽弁疾患などの心血管系合併症を発症するリスクも高くなります2。肥大型心筋症患者は、致死性心室不整脈の発症リスクがあり、若年者やスポーツ選手の突然死の主な原因の一つとなっています3。肥大型心筋症患者の一部は、拡張型心筋症や心不全へと進行し、心臓移植が必要となるリスクが高くなります。
References:
1. 難病情報センターホームページ(2024年11月現在)から引用、一部改変
2. Gersh, B.J., Maron, B.J., Bonow, R.O., Dearani, J.A., Fifer, M.A., Link, M.S., et al. 2011 ACCF/AHA guidelines for the diagnosis and treatment of hypertrophic cardiomyopathy. A report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on practice guidelines. Journal of the American College of Cardiology and Circulation, 58, e212-260.
3. Hong Y, Su WW, Li X. Risk factors of sudden cardiac death in hypertrophic cardiomyopathy. Current Opinion in Cardiology. 2022 Jan 1;37(1):15-21
Cytokinetics社について
Cytokinetics社は循環器領域の後期開発品を手掛けるバイオ製薬企業で、心筋機能が損なわれる衰弱性疾患の治療薬となる可能性を持つ、筋生物学に基づく薬剤候補の創製、開発、商業化に重点的に取り組んでいます。筋生物学および筋パフォーマンスのメカニズムにおけるリーダー企業として、心筋の機能および収縮性に影響を与えるよう特別にデザインした低分子薬剤候補の開発を行っています。閉塞性肥大型心筋症を対象に、心筋ミオシン阻害剤aficamtenを評価した第Ⅲ相臨床試験SEQUOIA-HCMの結果に基づき、Cytokinetics社はFDAにaficamtenの新薬承認申請を行い、欧州においては閉塞性肥大型心筋症治療薬としてのaficamtenの承認申請の準備を進めています。また、aficamtenは現在、閉塞性肥大型心筋症患者を対象にaficamten単剤療法とメトプロノール単剤療法を比較検討する第Ⅲ相臨床試験MAPLE-HCM、非閉塞性肥大型心筋症患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験ACACIA-HCM、閉塞性肥大型心筋症の小児患者を対象とした臨床試験CEDAR-HCM、肥大型心筋症患者を対象とした非盲検長期臨床試験FOREST-HCMにて評価が進行中です。また、Cytokinetics社は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者を対象に心筋活性化剤omecamtiv mecarbil、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の治療薬候補として、aficamtenとは作用機序が異なる心筋ミオシン阻害剤CK-586、また、特定の病型の筋ジストロフィーやその他の筋機能障害に対する治療への応用が期待される骨格筋速筋トロポニン活性化剤CK-089の開発も進めています。
Cytokinetics社の詳細は、www.cytokinetics.comをご参照ください。また、X、LinkedIn、Facebook、YouTubeでもフォローできます。
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2023年のグループ全体の売上高は476億ユーロ、従業員数は約100,000名、特別項目計上前の研究開発費は58億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社について
医療用医薬品、コンシューマーヘルスの各事業を通じて、日本の患者さんのための治療に変革をもたらす持続可能な取り組みを推進しています。医療用医薬品部門では、循環器・腎・代謝領域、オンコロジー領域、眼科領域、婦人科領域、血液領域、画像診断領域に、コンシューマーヘルス部門では、赤ちゃんの「人生最初の1000日」に適切な栄養を届けるため、女性の妊娠準備と妊娠期間を支援するサプリメントなどに注力しています。詳細はwww.pharma.bayer.jp, Facebook, YouTubeをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2024年11月19日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。