本資料は3月17日にドイツ・バイエル社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳編集したもので、報道関係者各位へ参考資料として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語を優先します。原文はwww.bayer.com/media/en-us/をご参照ください。
米国食品医薬品局が左室駆出率40%以上の心不全患者に対するフィネレノンの新適応を優先審査に指定
- フィネレノンは左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HF)患者(LVEFが軽度低下または保たれたHF患者)を対象とした第Ⅲ相臨床試験で心血管ベネフィットを示したミネラルコルチコイド受容体(MR)経路を標的とする初めての薬剤
- HFを対象としたこれまでで最大規模の第Ⅲ相臨床試験プログラムの一つとして現在進行中のMOONRAKERを構成する第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFのデータに基づく承認申請
- 米国食品医薬品局(FDA)は重篤な疾患の治療、診断、予防の有効性・安全性が使用可能な治療法と比較して、承認された場合に大きく改善されると考えられる医薬品の評価を優先審査に指定
- 米国のHF患者数約670万人のうち半数以上がLVEF 40%以上のHF1
ドイツ・ベルリン、2025年3月17日 ― ドイツ・バイエル社は、LVEF 40%以上の成人HF患者(LVEFが軽度低下したHF[HFmrEF]、LVEFの保たれたHF[HFpEF])の治療薬として、米国FDAがフィネレノンの適応追加承認申請(sNDA)を受理し、優先審査に指定したことを本日発表しました。今回の承認申請は、第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFのデータに基づいており、詳細データは2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表され、医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに同時掲載されました。
FDAは、重篤な疾患の治療、診断、予防の有効性・安全性が、使用可能な治療法と比較して、承認された場合に大きく改善されると考えられる医薬品の評価を優先審査に指定します。新薬承認申請におけるFDAの目標審査期間は、標準審査の10カ月に対して、優先審査指定されると承認申請から6カ月以内となります。本指定により、米国でのLVEF 40%以上のHFに対するケレンディアⓇの承認申請は、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による審査終了目標日および承認の可能性が、2025年第3四半期となります。
ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門リーダーシップチームメンバーで、エグゼクティブバイスプレジデント グローバル製品戦略&コマ―シャリゼーション責任者のクリスティーン・ロスは次のように述べています。「今回のFDAによる優先審査指定は、LVEF 40%以上のHFの治療パラダイムを前進させる新たな治療の柱として、フィネレノンを位置付ける可能性を高めています。現在、医師が使用できる有効性が証明された治療選択肢は限られています。フィネレノンが優先審査指定されたことにより、患者さんにフィネレノンをできるだけ早くお届けするための重要な一歩を踏み出すことができ、うれしく思います」
フィネレノンは、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で、第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFにおいて、LVEF 40%以上のHF患者を対象に心血管ベネフィットを示したMR経路を標的とする初めての薬剤です。フィネレノンは、2型糖尿病を合併する成人慢性腎臓病(CKD)患者の治療薬として、米国、欧州、日本、中国を含む世界90カ国以上で承認されており、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialta™)の名称ですでに販売されています。
フィネレノンはMRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることにより、血行動態因子や炎症・線維化プロセスなど、LVEF 40%以上のHFの主要な要因に対処します。第Ⅲ相臨床試験FINEARTS-HFの結果、フィネレノンはLVEF 40%以上のHF患者を対象に、プラセボと比べ、心血管アウトカムに関して統計学的に有意な改善を示しました。
米国FDAに行った適応追加承認申請は、現在進行中の臨床試験プログラムMOONRAKERの一つであるFINEARTS-HF試験のデータに基づいています。フィネレノンは、中国、EU、日本でも、LVEF 40%以上のHFに対して承認申請を行っており、現在審査中です。世界の他の市場においても、審査当局にさらなる承認申請を行う予定です。
【FINEARTS-HF試験について】
FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第Ⅲ相臨床試験です。過去12カ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するフィネレノン(ケレンディアⓇ)の有効性と安全性を検討しました。FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目でした。
世界37カ国、630カ所以上の施設より約6,000人の被験者が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回投与されました。また、本試験の被験者は、症状および併存疾患の治療のために標準治療を受けました。
FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中の臨床試験プログラムMOONRAKERは、15,000人以上の被験者を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムの一つです。幅広い層の被験者および臨床背景のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としています。
【ケレンディアⓇ/Firialta™(フィネレノン)について】
ケレンディアⓇおよびFirialta™は、フィネレノンの世界的に保護された商標です。フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAであり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されています。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与します。
フィネレノンは、2型糖尿病を合併する成人CKDの治療薬として、米国、欧州、日本、中国を含む世界90カ国以上で承認されており、ケレンディアⓇ(一部の国ではFirialta™)の名称で販売されています。フィネレノンは現在、心不全の治療に対して承認されていません。
フィネレノンの臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、HFとCKDをそれぞれ対象とした第Ⅲ相臨床試験10試験で構成されています。MOONRAKERプログラムには、FINEARTS-HF試験に加え、進行中の研究者主導共同試験であるREDEFINE-HF試験、CONFIRMATION-HF試験およびFINALITY-HF試験が含まれています。一方、CKDのTHUNDERBALLプログラムは、完了したFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験に加え、進行中のFIND-CKD試験、FIONA試験、FIONA-OLE試験、FINE-ONE試験および第Ⅱ相臨床試験のCONFIDENCE試験で構成されています。
【HFについて】
HFは複雑な臨床症候群であり、体内の血液および酸素需要に見合った十分な血液を心臓に満たし、送り出すための心臓のポンプ機能が徐々に低下することが特徴です。世界中で6,000万人以上がHFに罹患しており、65歳以上の入院の主要因となっています2,3。高齢化の影響もあり、HFの患者数は今後10年間で大幅に増加すると予測されています4,5,6。HF患者は予後不良であり、その死亡率は最も一般的ながんと同程度かそれ以上です7。HFには複数の併存疾患が組み合わさることがあり、HF患者の半数以上が肥満、CKD、糖尿病、高血圧、心房細動などを有しています8。HFの症状には、めまい、息切れ、疲労、睡眠障害、胸部不快感、浮腫(下肢の腫れ)、慢性的な咳や喘鳴などが挙げられます。
HFの危険因子には、高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞の既往、冠動脈疾患などがあります。治療の進歩にもかかわらず、HFと診断された人の約30%が1年以内に亡くなり、5年後には約40%に増加します7。
LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられます:
- LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下*です。
- LVEFが軽度低下したHF(HFmrEF)は、LVEFが41~49%*で、心臓のポンプ機能に何らかの障害がある患者さんのカテゴリーです。
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上です。
LVEF 40%以下*、LVEF 40%以上がそれぞれHF症例の約半数を占めますが、LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなります。疫学データの傾向より、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになる日が近いことが示唆されています。LVEF 40%以下*のHFでは治療が進歩していますが、LVEF 40%以上のHFではガイドラインに基づく治療選択肢が限られています。
* ESCのHF診療ガイドラインに基づく
References:
1. Bozkurt A, et al. Heart Failure Epidemiology and Outcomes Statistics: A Report of the Heart Failure Society of America. J Card Fail. 2023; Oct;29(10):1412-1451. doi: 10.1016/j.cardfail.2023.07.006. Epub 2023 Sep 26. PMID: 37797885; PMCID: PMC10864030.
2. World Heart Federation. About Heart Failure. Available at: https://world-heart-federation.org/cvd-roadmaps/whf-global-roadmaps/heart-failure/ Last accessed: July 2024
3. Mamas MA, et al. EHJ. 2017 Sep;19(9):1095-1104
4. Savarese G, et al. Cardiac Failure Review. 2017; Apr;3(1):7-11.
5. National Health Service. Heart Failure. Available at https://www.nhs.uk/conditions/heart-failure/ Last Access July 2024
6. Nedkoff L, Weber C. Heart. 2022 Feb 1;108(4):249-250
7. Virani SS et al. Circulation. 2021;23:143(8):e254-743
8. Khan, M.S., et al. Eur J Heart Fail, 2020;22:1032-1042
循環器疾患および腎疾患におけるバイエルのコミットメントについて
バイエルは、循環器疾患領域における革新的リーダーとして、革新的治療のポートフォリオを充実させることで、Science for a better lifeをお届けできるよう長年にわたり取り組んでいます。心臓と腎臓は健康や疾患において密接に関わっており、バイエルはアンメットメディカルニーズが高い循環器疾患と腎疾患に対する新しい治療アプローチについて、幅広い領域で取り組んでいます。バイエルの循環器フランチャイズには多くの製品があり、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にあるその他いくつかの化合物があります。これらの製品・化合物は、循環器疾患の治療法に影響を与える可能性のある標的やシグナル伝達経路を優先的に開発するバイエルのアプローチを反映しています。
バイエルについて
バイエルは、ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。私たちのミッション「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」のもと、バイエルの製品とサービスを通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活と地球の繁栄に貢献しています。バイエルは、持続可能な発展を推進し、事業を通じて良い影響を創出することに尽力しています。同時に、収益力を高め、イノベーションと成長を通して企業価値を創造することも目指しています。バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっています。2024年のグループ全体の売上高は466億ユーロ、従業員数は約93,000名、研究開発費は62億ユーロです。詳細はwww.bayer.comをご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2025年3月25日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements) が含まれている場合があります。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。