第1回:もっと気軽に婦人科受診を(高校生親子座談会 前編)
月経に関して、生活に支障が出るほどのトラブルがあれば婦人科を受診するものの、やはり行きづらさを感じる人は少なくありません。
今回は女性の健康や性教育の啓発を積極的に行っている宋美玄先生をお迎えして、高校生とそのお母さんとの座談会を開催。月経や婦人科受診についての疑問を、宋先生にお答えいただきました。
丸の内の森レディースクリニック
院長
産婦人科医 宋 美玄 先生
Aさん 高校2年生
Aさんのお母さん
Bさん 高校2年生
Bさんのお母さん
Cさん 高校2年生
Cさんのお母さん
かかりつけ婦人科医を持つことは自慢できること
- 司会
- はじめに、私たちにとって身近な月経(生理)ですが、「正常な月経の目安」はどういうものだと思いますか?
- Bさん
- 大体1ヶ月おきにきて、1週間くらい続くことだと思います。
- Cさん
- 経血がドロっとしていなくて、サラサラしていることかなと思いました。
- 宋先生
- みなさん、月経について良い認識をされていると思います。ただ、そこまでしっかり周期的に月経が来なくても大丈夫です。前の月経が始まってから次の月経が始まるまでの期間が25〜38日であれば問題ありません。また月経の期間も、1週間きちんとないといけないわけではありません。3〜7日間続けば正常です。
それと、ドロっとしていないという話がありましたが、経血は固まりにくいという特徴があります。かたまりが出るのは、経血の量が多くて子宮の中で固まってしまうためで、出血量が多い「過多月経」という症状の指標になります。親指の頭くらいのかたまりがあったら要注意です。
- 司会
- みなさん、月経について正しく理解されていて素晴らしいですね。月経について悩んでいることはありますか?
- Bさん
- 私は初日と2日目の生理痛が、痛み止めが効かないほど強くて辛いです。
- 宋先生
- 私も母から「月経痛(生理痛)はあって当たり前」と聞かされ、そう思っていたこともありました。ただ、日常生活に支障があるほどの痛みは、婦人科で治療したほうがいいでしょう。婦人科ではまず、その痛みが妊娠の準備をするための正常なものなのか、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があって痛いのかを超音波を使って調べます。
実は、毎月の月経は体にとって大きな負担です。高校生のようにいますぐの妊娠を望まない場合は、排卵を抑えたり、子宮内膜を厚くさせないようにしたりする治療を行うこともあります。治療には低用量ピルや黄体ホルモンの薬、鎮痛剤や漢方を使います。私も娘がいますが、初経を迎えたら黄体ホルモンの薬を飲ませたいと思っています。試験や部活など大事なイベントの際に、月経痛によってパフォーマンスを発揮できないのはもったいないです。
*低用量ピルには、避妊目的で使用される経口避妊薬(OC)と治療目的で使用される保険適用のある低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)があります。このページでは区別して記載されています。 - 司会
- 婦人科のお話が出ましたが、みなさんは婦人科にどんな印象をお持ちですか?
- Aさん
- 生理痛がすごく辛いときに薬をもらいに行ったり、生理の周期がバラバラでなかなか生理が来ない人が行ったりするのかなと思います。
- Cさん
- 妊娠したときに行くイメージがあります。
- 宋先生
- 妊娠したら行くところというイメージをお持ちの方もいると思いますが、私のクリニックでは高校生が制服で来ることもあります。月経について疑問があって、聞きに来る人もいます。「これが普通だ」と思い込んでいる状態が、実は治療が必要ということもあるので、初経が来たら年に1回は婦人科を受診してもらいたいと思います。
小学6年生から高校1年生であれば子宮頸がんワクチンを公費で打つことができるので、それをきっかけに婦人科に行くのもいいと思います。若いうちからかかりつけ婦人科医を持っていることは、自慢していいことですよ。
正しい知識を持ってライフプランを立てよう
- 司会
- 特に女性は妊娠や出産などライフステージの変化が大きいですが、仕事やプライベートも含めた人生設計、ライフプランについて考えたことはありますか?
- Aさん
- いつかは自分の子どもが欲しいと思いますが、具体的な年齢までは考えていません。ただ、高齢出産は大変と聞いたので、30代前半には産みたいかな。
- Bさん
- 遅からず早からずに結婚して、子どもは早めに欲しいです。結婚は20代で、子どもは20代後半から30代半ばでと考えています。
- Cさん
- 結婚も子どもも早い方がいいので、20歳くらいと思っています。
- 宋先生
- いつ産むかも含めて、産む・産まないは女性自身が決めることが大切です。でも高校生ではまだ、どんな仕事に就きたいか、いつ結婚したいか、子どもを産みたいか、わからない人が多いのではないでしょうか。高校生のいまできることは、妊娠・出産の知識を持ち、適した年齢を知っておくことです。生物学的に出産が適している時期は20代〜30代前半で、年齢とともに妊娠の可能性は低くなります。医療の力を借りても、授かれる可能性が「高い」と言えるのは30代半ばまでです。
しかし、女性にとってこの時期はキャリアを積む時期と重なります。女性の社会進出が進み、みなさんの年代では共働き世帯がさらに増えると思います。もしかしたらキャリアを積んでから妊娠・出産をしたほうが良いことがあるかもしれません。世の中を観察して、いろいろな側面からのライフプランを考えてみてください。
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